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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ベスト?/『赤ちゃんをさがせ』(青井夏海)/『じつは、わたくしこういうものです』(クラフトエヴィング商會)/映画『白夫人の妖恋』
中国民話『白蛇伝』に取材し、林房雄『白夫人の妖術』を原作とした日米合作のこの映画、ラストの大津浪のシーンなど、円熟期の円谷英二のハデな特撮で有名なのだが、実は今回が初見。
以前から見たい見たいと思ってたんだけど、ビデオ発売もなかったし、テレビ放映もあったんだかどうか。以前、ZUBATさんに「意外に有名なのを見てないんですね」と言われてしまった。こういう「見逃し」があるから「特撮ファン」とも名乗れない。……オレ、何かのファンだって名乗れるジャンルがあるのかな(ーー;)。
映画について語る前に、ちょっと気になることがある。というのがこの映画のタイトルの読み方である。
日本映画専門チャンネルのホームページでは、これを「びゃくふじんのようれん」と読ませているのだが、李香蘭……ああ、いやいや、山口淑子の演ずるヒロインの名前は、劇中では「白娘(パイニャン)」である。だとすると、このタイトル、「ぱいふじんのようれん」と読むのが正しいんじゃないのか? 私はずっとそう読んできたのだが。
不思議なことに、劇中でちゃんと中国語で名前を呼ばれているのはこの「白娘」だけなのである。お付きの「小青」はそのまま「しょうせい」だし、主人公の「許仙」は「きょせん」である。劇中、やたら「キョセン」、「キョセン」と呼ばれるものだから、そのたびに大橋巨泉の顔が浮かんで困った。
三年後にリメイクされた東映動画版『白蛇伝』では、「許仙」は「しゅうせん」、「小青」は「しゃおちん」とちゃんと中国語読みされている。なんでこんないい加減なことしたのかなあ。
映画自体は民話が現代的なドラマとして再生されたとは言い切れず、名匠、豊田四郎の演出もなんだか大雑把である。
なにより、白娘を演じる山口淑子が既にトウが立ち過ぎている上に、やたら眉間にシワを寄せて勘定的な演技ばかりするものだからまるで美しくない。戦前の『支那の夜』のころの方がずっと美しかった。もしかして、また「中国人」を演じさせられることに内心で反発でもしていたのだろうか。
白娘に比べると、小青役の八千草薫のほうが、ちょっとロリコン入っちゃいるけどずっと可憐だ。許仙と白娘を結びつける小悪魔みたいな役割(『白蛇伝』では魚の精だか、本編では小蛇の精。原典の民話自体にその二通りのものがあるようだ)を、楽しげに演じている。恐ろしいことに小青、東映動画版とは違って、最後には主人の白娘を裏切ってしまう。愛ゆえにどうしても許仙を殺せない白娘に愛想を尽かしてしまうのだ。……って、この二人を結びつけたのオマエじゃん(^_^;)。最後まで面倒見ろよ。
他の出演者も演技派揃いで豪華絢爛。
法海禅師(徳川夢声)、宿の亭主・王明(上田吉二郎)、許仙の姉・容(清川虹子)、その夫・李公甫(田中春男)、茅山道人(東野英治郎)、役人(小杉義男・沢村いき雄)、油売商人(谷 晃)、仙翁(左卜全)。
それからクレジットになかったので驚いたのだが、ほんのワンシーンのカメオ出演で、森繁久彌が露店商を演じている。ということは、森繁、実写とアニメの両方の『白蛇伝』に出演していることになる。「白蛇伝俳優」と呼んで差し支えないのではないか(^o^)。
ただ物語はヒドイ。
白娘が白蛇の化身と知った許仙が逃げ惑って、というパターンはこの手の物語の定番なのだが、最後にこの二人は和解する。ところが和解した途端に、法海禅師に殺されてしまうのだ。殺すくらいならなんで助けたかな。で、二人は手を取り合って極楽に向かうのだけれど、これっていったい、ハッピーエンドなのかアンハッピーエンドなのか。
理解に苦しむ映画だったなあ。(2003.3.8)
02月07日(金)
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