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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■妊娠来たかと鸛に問えば/『今日も映画日和』(和田誠・川本三郎・瀬戸川猛資)/『ワイルダーならどうする?』(キャメロン・クロウ)
 ワイルダーの『あなただけ今晩は』にロートンは出演する予定だった。
 しかしそのころ既にロートンはガンに冒されていた。ロートンはワイルダーに伝えた。
 「少しすればよくなる。四月ではなく、夏の終わりに来てくれ」
 夏の終わり、ハリウッド大通りのロートン家をワイルダーは訪ねた。
 体重が60ポンド(27キロ!)減っていたロートンは、プールサイドを看護士に付き添われて歩いてみせた。けれど、最後の数歩は息も絶え絶えだった。
 「医者の指示は一つ残らず守ったんだ! 看護士も四六時中ついている! だから9月には万全だ!」
 それを聞いたワイルダーは答える。
 「すごいじゃないか! 続けるんだな! じゃあ、9月から始めよう!」
 ロートンが亡くなったのは、その一週間後のことである。

 映画に関する本を読むと語りたくって仕方なくなるなあ。
 もちろん、この本を読んだら、ロートンのほかにも触れたくなる人々がいくらでもいるのである。いや、一つ一つのエピソードの面白いこと。
 ジャック・レモン、ジョー・E・ブラウン、I.A.L.ダイアモンド、マリリン・モンロー、アーサー・ミラー、シャーリー・マクレーン、ウォルター・マッソー、オードリー・ヘップバーン、トニー・カーティス、ピーター・セラーズ、ピーター・ローレ、セシル・B・デミル、チャールズ・リンドバーグ……。
 とても語りきれないことの中で、少しだけ触れたいのは、ワイルダーが会社とトラブッて編集を放棄し、本編の三割が失われた『シャーロック・ホームズの冒険』である。見たことのある人にはわかると思うが、あれはいいところもたくさんありはするのだが(マイクロフト・ホームズ=クリストファー・リー!)、ホームズファンにはイマイチの評価だったりする。しかし、もしもカットされたフィルムが見つかれば、もしかして評価は逆転するのではないか。
 そういう努力をこそ、映画会社はしてほしいものである。

 ワイルダーの語る「最高の映画」は『戦艦ポチョムキン』。
 自作の傑作は『アパートの鍵貸します』『お熱いのがお好き』『サンセット大通り』の三本。
 傑作コメディと認めるものは『イヴの総て』『雨に唄えば』『フォレスト・ガンプ』『恋愛小説家』『フル・モンティ』。周防正行監督の『Shall We ダンス?』も傑作と認めてくれている。
 「いいコメディはまじめに監督しなくちゃいけない」
 このセリフ、聞かせてやりたいヤツラって、やたら多いような気がするな。

01月11日(土)
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