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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■餃子、餃子、餃子〜、餃子を食べぇよおー♪/『真・無責任艦長タイラーD 復活編』(吉岡平)/『東西奇ッ怪紳士録』(水木しげる)ほか
 風来山人こと平賀源内(彼自身が奇人伝の最高傑作、『風流志道軒伝』をモノにしている。もちろん中味は実在の志道軒とはほとんど関係がない)。
 二笑亭主人・渡辺釜蔵。
 アドルフ・ヒトラー(水木氏がヒトラーの伝記を描くのは二度目だ。もちろん「奇人」としてのヒトラーを描くのである)。
 創作か事実も混じっているのか、アフリカ・サンガ村のボロタハム氏。
 フランスの妖怪城主シュヴァル。
 鳥人幸吉。
 この脈絡のないセレクションがスバラシイ。

 個人的に好きなのが水木氏を中心とした『貸本末期の紳士たち』。
 多分、昭和40年かそれより少し前の時代の物語。
 ちょうど私が物心がついたころのことだ。
 熱烈な水木ファンなら、『ゲゲゲの鬼太郎』ほかの水木マンガに登場するキャラクターが、実在の水木氏の友人たちをモデルにしていることをご存知だろう。

 つゆき・サブローこと杉本五郎氏(本名は露木三郎だそうな。ややこしい)。
 マンガ家でありアニメーターでありフィルムコレクター、古書コレクターとしても著名、かつ、唐沢俊一氏のお師匠さんでもある氏であるが、水木マンガに登場する時はあの「吸血鬼エリート(霧の中のジョニー)」。
 水木さんの似顔絵は実に大胆な線にもかかわらずそっくりなんだが、氏もホントに「エリート」そっくりである。水木さんのご友人の中では珍しくおカネもちであったらしい。
 氏のマンガで今、入手できるのは、『QJマンガ選書06・寄生人』(太田出版)しかない。しまった、まだ買ってなかったなあ。

 メガネで出っ歯の山田こと桜井昌一氏。
 私は、『悪魔くん(『千年王国』)』の蛙男も桜井氏がモデルじゃないかとニランでたが、桜井氏との会話の中から『悪魔くん』のアイデアが生まれたことを、今回、明かしている。「小切手は持っているが現金は持っていない」といういかにも胡散臭い貧乏クサさがいいなあ。このマンガは氏が兎月書房にいたころだろうか。夫婦喧嘩でよく奥さんに殴られてたみたいだ。

 マンガ家・宇田川マサオ。
 本編では「歌多川雅男」とちょっと名前を変えて登場。
 さすがにこのヒトのマンガは私も読んだことがない。『ばったり侍』というのらしいのだが、多分1960年前後に出版されて以来復刻はされてないのだろう。かつては紙芝居で当てておお金持ち、今は四畳半のド貧乏でも「希望」だけは妄想並みにある。それがかえってモノガナシイ。
 顔はまんま「妖怪いやみ」。この「いやみ」というキャラクターも水木さんはお好きらしく、三度も鬼太郎と戦わせている。

 ネズミ男・上田。
 『ねぼけ人生』によれば、「山田円太郎」というのが本名だそうだ。やっぱり少女マンガを描いたリしてたらしいが作品名は不明。ネズミ男の描いた少女マンガって、錯綜して入手したら結構な価値にならんかなあ。本編中ではやっぱり貧乏だが、後に印刷会社の社長に収まったそうな。成功したネズミ男というのも「合わない」ようだが、何となく果たせぬ夢が果たされたのかな、という気がして、ちょっと嬉しい。

 黒洋万平。
 名前を変えても容貌ですぐに分る、言わずと知れた「白土三平」である。
 『忍者武芸帳』が三千部売れただけで貧乏仲間から大富豪扱い、というのが笑っていいのか切ないのかってところだが、その怪異な容貌はやはり見るだけで「奇人」だとしか言えない。プラットフォームのベンチでホームレスのように眠ってたのも実話だったんじゃないか。

 つげ義春。
 このころ家賃を2年ほど溜めてたとか。
 水木さんのアシストをしていたというのは有名だが、女の子を描くのが苦手な水木さんの代わりに描くことも多かった。絵柄が変わっちゃって、今はつげさんもあのころの可憐な少女の絵は描けなくなっている。奥さんの佐々木マキさんと一緒になって、おカネもちにはなったようだけども。
 「つげさんどうして上にのびるんです」
「いま三畳にいますから。どうしても上と下にしか空間が残されていないのです。横は荷物でいっぱいです」
 だったら私も、上に伸びてたはずだが。大学時代はそんなとこに住んでたし。

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02月01日(金)
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