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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■凡人礼賛/DVD『エイリアン9』2巻/『魔獣狩り』(夢枕獏・木戸嘉実)ほか
 そのあたりの勘違いが、読者の感情移入を拒否するようなキャラクター造型につながってきてるのだ。精神世界に行ってる間の主人公の少年ひつじの表情、目は白目剥いてるし口からはヨダレ、生汗かいてて気色が悪いったらありゃしない。こんな絵を描く必然性なんて全くないんだが、こういう「壊れた」顔を描くことが、細野さん本当に好きなんだよねえ。『猿飛』や『ガンモ』のころもチラチラそういう気配はあったんだが、メジャーを離れてからは(^^)、その傾向が一気に顕著になった。
 でも、細野さんが人間をどう見ているかは知らないが、自分の歪んだ人間観を読者に押しつけるようなことはあまりしない方がいいと思うんである。少なくとも自分が「王道」を描こうって思っているならば。
 いや、本人がマイナー漫画でいいんだって思ってんだったらこんなイヤごとは言わないんだけどね。


 マンガ、夢枕獏原作・木戸嘉実漫画『サイコダイバー魔獣狩り』(双葉社・980円)。
 セガのなんのゲームだったかなあ、この「サイコダイバー」って言葉を勝手に使って、獏さんから(なんか夢枕さんって言い方がピンと来ないね、この人の葉場合は)「そりゃオレの造語だ!」って文句つけられたことがあったっけ。
 こういうSF用語には一般名詞としての科学用語で著作権の発生しないものとするものが混在していて、シロウトにはなかなか判別しにくいのだが、だからといっていい加減にしていいものでもない。獏さんの主張は全く正しいのである。
 もちろん、「サイコダイバー」という言葉を使わせない、なんて偏狭なことを獏さんは言いたいわけじゃあるまい。
 事前に、使用許可を得ればよかっただけなのだが、そう作者の中には「ま、いっか」で済ましちゃういい加減なヒトも多いのである。
 こないだ見た鴻上尚史の『ファントム・ペイン』、その前作の『スナフキンの手紙』でも、「サイコダイバー」って言葉を平気で使ってたが、さて、獏さんにヒトコト断った上で使ってるのかなあ。鴻上さんの芝居って、既成作品からの引用が多いせいか、どうも言葉遣いが雑然としていて耳障りなことが多いのである。これもわざわざ「サイコダイブ」なんて言葉に拘る必要なんてないんで、許可を得ずに勝手に使ってる気配が濃厚。鴻上さんもいろいろ芝居について大風呂敷を広げる前に、自分の足元を見てたほうがいいんじゃないかな。

 それは余談(^^)。
 実は原作は読んだことないんで、マンガとの比較はできないんだけど、同じ精神世界モノの細野さんのグログロ、グチョグチョよりは随分サッパリとした印象。いや、もちろんバイオレンスはあるんだけれど、基本的にアニメ絵なのであまり気色悪い感じはしないのだ。
 それをヨシとするか物足りないとするかで評価は分かれると思うが、獏さんは基本的にどんなバイオレンス描写を行っても「希望」のある物語にしようってポリシーはあるヒトなんで、私はまあまあいいんじゃないかと思う。何より新人さんに原作もので力をつけさせようって試み自体はどんどんやっていいと思うし。
 確かに絵柄の単調さがキャラクターに深みを与え損なっているし、何より敵が大ボスに至るまで小粒なヤツにしか見えないってのは結構イタイ欠点。
 でもふんだんに大ゴマ使ってるあたり、この新人マンガ家さん、なかなか度胸はあるのだ。原作読んでみようかな、という気にさせられる程度の魅力はあるって感じだろうか。

10月23日(火)
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