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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ノンマルトの後裔/映画『ウルトラマンコスモス ファーストコンタクト』ほか
……あんたねえ、つい、こないだまで「ひろこ〜」「ともよ〜」って叫んでたガキどもがそんなん見に行くと思ってんの? てな感じでこの映画、大ゴケしちゃったらしいけど、山田風太郎作品として見た場合、近年の『くの一忍法帖』シリーズと比べてみても、その背徳的な魅力を伝えている点では全く遜色がない。
原作の七人の妖術僧が五人に減らされてはいるものの、彼らの特殊能力はケレン味たっぷりで、エンタテインメントとは即ち「見世物」なり、と割り切って描いているのが実に潔い。
渡辺典子も、これが新人とは思えぬ演技力、三役を見事に演じ分ける。
なによりも最高なのは、これが彼のベスト・ヴァリアント・アクトといってよいだろう、果心居士(この史上最大の妖術師のことを知らない人は、小泉八雲の『果心居士』か、司馬遼太郎『果心居士の幻術』、細野不二彦のマンガ『さすがの猿飛』を読もう)役の成田三樹夫!
松永彈正に取り入り、妖しげな幻術でその心を惑わし、天下簒奪の欲望を掻き立てさせるが、いったい何の目的でそのようなことをするのか、皆目、解らない。人間の存在そのものを嘲笑うような甲高い「ほーっほっほっほ」という笑い、一転して「天下を取れ」と彈正を恫喝する悪魔のごとき形相、地獄から響いてくるかのような声、どれ一つ取っても一世一代の名演の名に値する。
低予算ゆえのアラは散見するものの、抑制の利いた脚本(『殺人狂時代』『ルパン三世』の小川英)、ロングと長回しを多用し、役者の演技をじっくり取ってなお飽きさせない演出(『悪魔が来りて笛を吹く』の斎藤光正)の、これだけの傑作が半ば埋もれているというのはなんともったいないことか。
『RED SHADOW』なんてクソを見るくらいなら、この旧作をもう一度堪能した方が遥かにいいぞ。
9時からテレビドラマ『明るいほうへ明るいほうへ・童謡詩人金子みすゞ』
近年、急にクローズアップされ始めた金子みすゞの伝記ドラマ。映画では田中美里が演じる予定らしいが、テレビスペシャル版は松たか子。
しげがファンである渡部篤郎がみすゞの夫、桐原役を演じているので録画したが、実話とは言え、いかにもツクリっぽい展開にはなかなか乗れない。
たいていこういう自殺したひととか早死にしたひとを描く時は(それが戦前ものだったら特に)『おしん』の亜流になっちゃうんだけど、最後にしみじみ過去を思い返して終わるとこまでそのまんま。
これだから脚本家不在なんて言われちゃうんだよなあ。
マンガ、和田慎二『ピグマリオ』第3巻(メディアファクトリー)。
死の山のゼオの話のあたり、『もののけ姫』を見た人は「あ、マネしてる」と思うかもしれないが、もちろん『ピグマリオ』の方が先に描かれているので、それは間違い。
雪姫の描写なんか、『太陽の王子ホルスの大冒険』の影響が顕著。だから宮崎駿と共通性があるのは当然と言えば当然かも。
セリフやモノローグが説明的過ぎるという欠点はまただけど、好きな作品を思う存分描いてるから、テンポを阻害するほどまでには至っていない。……でも全12巻かあ。あまり本屋で見かけないんだけど、全巻揃えられるだろうか。
08月27日(月)
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