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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ナニワの謎/『怪盗対名探偵 フランス・ミステリーの歴史』(松村喜雄)ほか
 石森さんも藤本さんも、病気になってからは極端に作品数が減っていった。『ドラえもん』だけで手いっぱいになっていたのだ。死ぬ少しまえのインタビューで、「手塚さんの『火の鳥』みたいな大長編SFを書いてみたい」と語っていたのが思い出される。それは中絶した「四万年漂流」などへの思いもあったのかもしれない。
 『ドラえもん』はもういいからもっとSFを、と思っていたのは私だけじゃないはずだ。

 マンガ、岡田康則『ドラえもん のび太と翼の勇者たち』。
 藤本さん亡きあと、『南海大冒険』『宇宙漂流記』『太陽王伝説』と続いてきた中では、一番よい出来。やっばり駄目な少年が努力するってパターンは継承しないとね。
 それでも表情一つとってみても、単調に見えて微妙に線を変えて複雑な心理を表現していた藤本さんに比べれば、雲泥の差があるが、それを言うのは酷というものだろう。ただエピソードを詰め込みすぎて、イカロスレースや、イカロスの島探索があっという間に終わってしまうのは感心しない。お子様は長い間は画面に集中していられないからどんどん場面転換させようという考えなら、とんだ考え違いだ。子供は速い展開を望んでいるのではなく面白い展開を望んでいるのだ。画面の密度を上げることに最近のドラえもん映画は腐心していない。
 映画、未だに観に行くかどうか迷っているのである。

 手塚治虫『ブラック・ジャック豪華版』16巻。
 ああ、今日はなんでこう昔を懐かしまねばならないマンガばかり読んでるんだ。年取っちゃったのかなあ、やっぱり。
 初期の傑作、と言うか、この作品が圧倒的好評で迎えられたために連載が決定した『ミユキとベン』が、やっと収録、というのはどういう事情があったのか。雑誌掲載時は「ブラックジャックの正体は誰も知らない。ただ彼は今もどこかで奇跡のメスを振るっているだろう」というナレーションがラストのコマに入っていたはずだが、さすがに16巻まできて今更それはないだろうということなのか全面カット(本名「間 黒男」ってのも分っちゃってるしな)。
 でもこれがかえってラストに余韻を醸し出しているのだ。怪我の功名ってところかもな。
 ラストを飾る『過ぎ去りし一瞬』は、唯一の中編。『サンメリーダの梟』というタイトルでアニメ化もされたけど中身は殆ど別物になっていた。
 多分描いてる途中で構想が変わったのだろう(手塚治虫にゃよくあることだ)、前半と後半で主役が変わっちゃうというとんでもない話なのだが、ラストで『鉄腕アトム・キリストの眼』を髣髴とさせるシーンが出てきたのは手塚さんのファンサービスかも。

 マンガ、高橋留美子『うる星やつら・コピーdeデート』。
 山口勝平と高橋留美子のインタビューが目的でまだ買ってる雑誌版『うる星』。依然持ってたやつは人に貸してるうちに所々抜けてしまっている。文庫でもう一度揃えなおしたいんだけど、18巻もあるから古本屋で買うしかない。
 しかし今見返してみても、『うる星』に出てくる女性キャラって、性格的に男に敬遠されても仕方のないやつらばかりである。連載当時、よく「うる星の男キャラってどうしてバカばっかりなんですか?」という質問がファンからされていたが、あたるほどのバカでなければ性格ブスのラムと付き合ったりはできまい。
 『めぞん一刻』の響子さんもそうだが、男が付き合いたくない女の要素、嫉妬、ひがみ、鈍感、無意識の傷つけ、そんなものをやたら持ってるのである。で、未だに『犬夜叉』のかごめでそれやってるのな。
 高橋さんは「あたるに絶対ラムのことを好きだと言わせない」と禁じ手を作って物語を作っていったそうだが、端から見てはっきりそれと分るものを言わないでいるのは白けるだけだ。
 私の場合、『うる星』はやっぱり映画版第2作『ビューティフルドリーマー』で終わっちゃってるのだ。

 ……こんなに読んでちゃ寝る時間がなくなるのも当然だな。気がついたら時計は2時なのであった。というわけで女房が買ってきた『ナニワ金融道』1巻にまでは手が出ないのでありました。

03月15日(木)
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