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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■『のだめ』エランドール賞/『裁判狂時代』(阿曽山大噴火)/『シャアへの鎮魂歌』(池田秀一)
 かと思うと、思いっきり熱血漢な検察官も。満員電車で犯行を繰り返した前科二犯の痴漢の裁判で、モゴモゴ言い訳をする被告人に対して、「被害者の心情を考えんのか!」「病気だろう、専門家に見てもらえ!」「裁判官の前では反省してるって、全然してないじゃないか!」と完全にキレている。圧倒された被告人が「極刑にしてください」。いいなあ、痴漢三回なら死刑。犯人自身がそう望んだからそうしましたって判例ができれば、痴漢も減ると思うんだけど。

 ほかにも被告人を全然弁護しないで検察官と一緒になって責め苛む弁護士とか、傍聴人をやたら注意する裁判官とか。
 本書で扱っている裁判は、そんな、新聞の片隅にも載らないような本当に些細な事件ばかりだけれども、いくつかは超有名どころの裁判レポートも紹介されている。
 一つは「法の華」事件。あの「最高ですかあ?」で有名になった福永法源の詐欺事件だ。被告人が「本なんて一冊も書いてない」と、そこでは正直に語るけれども、信仰上の件に関しては「私には天声が聞こえる」と主張して曲げようとしない。そこで裁判官が突っ込む。「なんて声が聞こえたの?」
 被告人の答え。「法源誕生だよ」。
 裁判官、「日本語で? お釈迦様はインド人だけど」。
 被告人、「い、いやあ、どこの出身かは知りませんけど」。
 ……笑っちゃうと言うかあきれちゃうと言うか、この程度の言い訳も考え付いてなかったんだねえ。「意識を感じるので、それを私が日本語に翻訳してます」くらい言えよってねー。
 もう一つの重大事件は、オウム真理教事件だけれども、その醍醐味は本書を読んで味わっていただきたい。

 しかしあれだ、裁判員制度が2009年度から実施されようと言うのに、このクニの愚鈍で卑怯で無責任な一般大衆の6割以上が「裁判員に選ばれたくない」とかほざいているのだそうだ。小学生かお前らは。シゴトと言うのはやんなきゃならないときには四の五の言わずにやんなきゃならないんだから、今のうちにちょこちょこ裁判を傍聴しといた方がいいと思うんだけど。
 え? 裁判って誰でも傍聴できるのかって?
 そうだよ!! ……。


『シャアへの鎮魂歌 わが青春の赤い彗星 A Requiem For Char Aznable』(池田秀一/ワニブックス)

> 人気アニメ「機動戦士ガンダム」でシャア・アズナブルを演じる声優・池田秀一の初の自伝! まるでドラマのようなシャアとの運命的な出会いから、池田さんから見たシャアの魅力、アムロ役・古谷徹さんら仲間たちとの知られざるエピソード、そして今年8月に死去したブライト・ノア役・鈴置洋孝さんへの別れの言葉……。涙なしでは読めない、永遠のヒーロー・シャアと共に生きたその27年間を余すところなくつづります。

 池田秀一の自伝というよりは、「シャア・アズナブル」の自伝と言っていいくらいに、シャアに関する思い入れが全ページに渡って書き連ねられている印象。
確かに現在の視点で俳優・池田秀一を鑑みるならば当然のことなのだろうが、子役時代の『路傍の石』や『次郎物語』の池田秀一も印象深い身にしてみれば、いささかの物足りなさ、わびしさを感じるのも事実である。石原裕次郎とのエピソードなどはもっと詳しく書いてほしかったところだ。

 けれども、いかに惹句でそのように謳われていようとも、本書は事実において池田秀一の「自伝」ではない。「はじめに」で著者自身が語っている通り、本書執筆の動機は、『機動戦士Zガンダム』の映画化をきっかけにして、「僕とシャアが一緒に歩んで来た道をお見せすることで、今、何かを生み出そうとしている次の世代の人たちの手助けになるのであれば」という思いが募ってきたから、ということなのだ。
 従って、「池田秀一はどうして戸田恵子と離婚して玉川紗己子と結婚したのか」とか、芸能雑誌的な興味で本書を読んだとしてもその結果は徒労に終わる。もっとも、たいていのアニメファンは、そういう「二次元のイメージを破壊すること」に対しては生理的に拒否反応を示すだろうから、そのあたりの事情について書かれなくて正解だったと思う。良くも悪くもアニメファンはピュアな人が多い。


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02月10日(土)
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