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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■実相寺昭雄氏、死去/映画『ヅラ刑事(ヅラデカ)』
実相寺演出において、映像の中にしばしば夾雑物が置かれるのはなぜか。
伴奏曲としてクラシックが多用されるのはなぜか。
仙人然とした実相寺監督は、「カメラの切り返しがラクだ」とか「単に好きだから」と、観客の疑問をはぐらかすようなことを口にするが、そうではあるまい。
これはコントラプンクト(対位法)による世界の破壊と再生なのである。
そのようにして実相寺作品を観る時、それらはは「日本的な精神風土に迫る作品」程度のものではないことが見えてくる。
一連の実相寺作品は「ノアの箱舟」の物語であり、人間の再生神話なのだ。
20代を過ぎて、私はようやく大島渚らと組んだATGの一連の作品に出会った。
再び映画監督として脚光を浴びることになる『帝都物語』や『悪徳の栄え』にも魅せられた。まあ失敗作としか言えない『ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説』もまた、神話の物語であると微笑ましく見ることはできた。
『屋根裏の散歩者』『D坂の殺人事件』『姑獲鳥の夏』など一連のミステリーの最も斬新かつ上質な演出の手際に、この監督はいつまで経っても先鋭的なのだと感服した。
しかしそんな傑作群の中でも、一本を選ぶとしたら――。
私はやはり、『京都買います』を選ぶだろう。
実相寺昭雄の分身は、現実世界でも胡蝶を追い求め、幽冥の境に生きた岸田森しかいないのだから。
シネ・リーブル博多駅で、『ヅラ刑事(ヅラデカ)』を見る。
監督はご存知河崎実だが、監修は『日本以外全部沈没』に続いて実相寺昭雄。
偶然、追悼の意味を込めての映画鑑賞となった。
『ヅラ刑事(ヅラデカ)』
(2006年/提供:バップ/クロックワークス/エースデュースエンタテインメント/ツイン/ローソンチケット/オー・エル・エム/スカパー・ウェルシンク/リバートップ/トルネード・フィルム)
【スタッフ】
プロデューサー・脚本・監督 河崎実
監修 実相寺昭雄
【キャスト】
ヅラ刑事:モト冬樹/オヤジ刑事:加納良治/デカチン刑事:イジリー岡田/デブ刑事:ウガンダ・トラ/イケメン刑事:桐島優介/チビ刑事:なべやかん/トンコ:橋本まい/面堂啓介<ボス>:中野英雄/仁多博士:ドクター中松/友情出演:飯島愛/特別出演:さとう珠緒
【ストーリー】
明らかにヅラのため、犯人を不安な気にさせる。
そして必殺技はヅラを投げつける「モト・ヅラッガー」!
東京でもっとも猥雑な街・新宿の花曲署の刑事たちは、独特のキャラクター揃い。
ヅラを投げる必殺技を持つヅラ刑事(モト・冬樹)、並外れたチンチンを持つデカチン刑事(イジリー岡田)。さらにデブ・チビ・オヤジ・イケメンと、様々な個性の刑事たちがいる。
一見マイナス要素の男たちだが、彼らは捜査になると素晴らしい力を発揮するのだ。
彼らを統率するのは沈着冷静な捜査一係長・面堂(中野英雄)。これから一癖も二癖もあるどころか、全身癖のクレイジーな刑事たちの大活躍が始まる!!
もちろん南郷勇一も登場(笑)。
全編馬鹿映画なのは言うまでもないが、モトさんが決しておちゃらけた芝居をせずに、ヅラを投げるにしろ真剣に演じているのが素晴らしい。馬鹿馬鹿しいと言うのなら、没羽箭張清も銭形平次も荒唐無稽なのだ。
ハゲをからかうギャグはベタで、使い古されていると批判する向きもあるかもしれない。けれども、ちょっと考えていただきたい。人類がハゲを気にするようになったのは、いったいいつのころからなのか。
エジプトのミイラの中には、かつらをかぶっているものも発見されているということである。本邦においても、九世紀ごろ、延喜の治、醍醐天皇の御代に既にかつらの記録があると言う。
人間の美醜の感覚が国や時代によって変化するのは当然だが、「ハゲを気にする」感覚は、国家間、世代間を越えて、かなり人類に普遍的な悩みであると言えるのだ。
「はげちゃびんだけはイヤ!」と恋人に拒絶される若き日のヅラ刑事。
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11月30日(木)
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