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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■オリジナルタイトルが意味ありげだけど/映画『トゥモロー・ワールド』
トゥモロー・ワールド Children of Men
(2006年|イギリス、アメリカ|カラー|109分)

【スタッフ】
監督:アルフォンソ・キュアロン
製作:マーク・エイブラハム、エリック・ニューマン、ヒラリー・ショー、トニー・スミス
脚本:アルフォンソ・キュアロン、トーマス・A・ブリス
原作:P・D・ジェイムズ『人類の子供たち』
撮影:エマニュエル・ルベツキ 音楽:ジョン・タヴナー 【キャスト】 クライヴ・オーウェン ジュリアン・ムーア マイケル・ケイン キウェテル・イジョフォー チャーリー・ハナム クレア=ホープ・アシティー?

  “ダルグリッシュ警視シリーズ”などで知られる英国を代表する女流ミステリ作家P・D・ジェイムズの『人類の子供たち』を「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のアルフォンソ・キュアロン監督が映画化した近未来SFサスペンス。子供が誕生しなくなった近未来の地球を舞台に、人類の未来を左右する一人の少女を巡る攻防に巻き込まれた主人公の運命をスリリングに描く。クライマックスの戦闘シーンでの長回しをはじめ技巧を駆使した臨場感あふれる映像表現が高く評価され、ヴェネチア国際映画祭ではオゼッラ賞(技術貢献賞)を獲得した。
 西暦2027年、人類はすでに18年間も子供が誕生していなかった。原因は分からず、人類滅亡の時が刻一刻と迫っていた。希望を失った世界には暴力と無秩序が拡まっていた。こうした中、英国政府は国境を封鎖し不法入国者の徹底した取締りで辛うじて治安を維持していた。そんなある日、エネルギー省の官僚セオは、彼の元妻ジュリアン率いる反政府組織“FISH”に拉致される。ジュリアンの目的は、ある移民の少女を“ヒューマン・プロジェクト”という組織に引き渡すために必要な“通行証”を手に入れることだった。最初は拒否したものの、結局はジュリアンに協力するセオだったが…。


一見、SFである。
 子どもが生まれなくなった近未来の世界、という設定は確かにSFでしかありえないが、その現象に理由が与えられない時点で、ドラマはSFではなく寓話としてしか機能しなくなる。
 もちろん、SFが一種の寓話性を持っていることは事実であるが、未知の現象に対して科学的かつ具体的な理由が与えられず、そこから派生すべき事態の解決方法や未来への何らかの展望が示されない時点で、SFとしての面白さは消滅してしまう。
 あとはこれ、宗教に逃げるしかないなあと思って見ていたら、案の定、そうなってしまった。
別にドラマ作りの面でそれがいけないというわけでもないが、だったらSF的な設定をわざわざ導入する必要もない。結局、ドラマ的な意匠としては『隠し砦の三悪人』やら『戦国野郎』の近未来版にしかなっさてはおらず、しかも地味だ。宗教的な色彩は、文化的な違いもあって、日本人である私にしてみれば、勝手に殉教者ごっこしてれば? でしかない。
原作のP.D.ジェイムズの小説とは全く違ったものになっているということであるが、SFが何なのかよく分かっていない連中に作らせると、こんな腑抜けた映画ができてしまうのである。『2001年宇宙の旅』の宗教性が、悪い方向に進んじゃったような映画であった。

こういう映画なら、日本人が脚色した方が、絶対面白いものになったろうなあ。

11月29日(水)
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