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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■『イッセー尾形のつくり方2006in博多』ワークショップ」九日目/続・発表会本番! LOVE IS FOREVER(笑)
前回の北九州公演で、森田さんがLisaさんを見て、「こんなきれいな人が去年もいたかな?」と仰っていたが、Lisaさんもこの一年で、見違えるように美しくなっていらっしゃるのである。
これは比喩ではなく、実際、別人ではないかと思うほどなのだ。
女性のみなさんに朗報。イッセー尾形ワークショップは、美容に最も効果的です(笑)。
セイノさんは、最後のダメ出しで、森田さんに「Tさんとの違いは分かるよね」と言われていた。頷いた顔の唇の端に、悔しさがにじんでいた。
交流会のあと、時間の余裕のある人たちが集まって、居酒屋で2次会。
セイノさんはもしかして凹んでいるかと思い、私は「また来るよね」と声をかけた。
彼女は、元気よく「はい!」と答えた。
私と組んだKさんは、私の向かいに座って、一緒にモツ鍋をつついていた。
「今度のワークショップで、夫婦喧嘩は悪いものじゃないって思えました」とKさんは仰る。
「うちの親はよく夜通し喧嘩してましたよ」
「でも、喧嘩はしても、奥さんに手を上げる男だけは、許せませんね」
私は、自分が舞台で席を立った時のことについて、その時の心情を説明した。
「興奮すると、男は一応、手は挙げますけど、しまったと思って、降ろすんですよ。あるいは逃げ出す。あの時に立って座ったのは、ちょうどそんな感じでしたね」
続けて、私は「博多の男は」と一席ぶっていた。
「博多の男は本当は弱虫なんです。自分が本当は女には勝てないと知ってます。けれど痩せ我慢して、強く見せようとする。いつだって逃げ出したいのに、いざというときには自分が逃げ出せないことに気付くんです。逃げ出しても近所の居酒屋止まりですね。私も以前、女の子と一緒の時に、ヤクザに絡まれたことがあったんですけど、本音を言えば逃げ出したくて仕方がなかったです。けれども、逃げられない。かと言って喧嘩をするわけにもいかない。ただひたすらニコニコして、一発殴られてもニコニコしてたら、許して帰ってくれました。私は、森田さんが今度のワークショップで、そんな博多の男の心情を組んで芝居を組み立ててくれたことが一番嬉しかったんです」
まあ、これは私のちょっとした自慢話ではあるが、若いころのことなので、今はとてもこんな勇気が出るかどうかは自信がない。
そのこともちゃんと言ったのだが、Kさんは感動して涙ぐんでいらっしゃった。
「そういう相手を見つけたい」とも言ってくれた。
私のような小心者でも、少しは人の心を動かせたのなら、ありがたい話である。
森田さんに散々へたくそ呼ばわりされたある男性は、「わけが分からん」と憤慨していた。
彼を取り囲んで、みんなで寄ってたかって「森田さんの意図はね」と説明しようとする。
みんな、さっきまで森田さんにクソミソにやられていたのに、その男性に同意するどころか、森田さんを援護しようとしているのがおかしい。
森田マジックにすっかりやられているのだ。
見ようによっては、まるで宗教の折伏のようだが、実際、そういう面もあるのかもしれない。
みんな、何かを掴んでいる。
それは言葉にはできないものではあろうが、確実に存在しているものだ。私はそのことを着実に感じていた。
今回の舞台。
時代を現代に設定しなかったのは、森田さんのアイデアである。
「昔の夫婦喧嘩を再現したい」
森田さんは、そう仰った。
どうして現代人の離婚率が高くなり、家庭が崩壊するようになったか。喧嘩できる夫婦の方が本当は幸せで、一方が怒っても一方が黙り込むような、お互いに会話のない夫婦になってしまったら、あとは離婚するしかなくなる……。
描かれる家族の点景は、すべて四人から五人で構成されている。「大家族」が生き残っていた時代で、夫婦の、あるいは親子の喧嘩は日常茶飯事。そこにいる婆ちゃんや近所のおばさんは、喧嘩を仲裁しようともしない。
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11月18日(土)
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