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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■『イッセー尾形のつくり方2006in博多』ワークショップ」九日目/発表会本番!
今回のワークショップ参加、もちろん職場には明かしていない。
興味があって来てくれる人がいるとも思えないし、何かのセミナーみたいなものにかぶれているのかと誤解されようものなら業腹だし、何より、遊ぶ余裕があっていいですねえとか、皮肉を言われるのがいやだったからだ。
そんなことを言いそうな陰険な同僚もいるのである。
仕事をサボっているわけではないが、発表会に出るためには今日は早退するしかなく、そのためにここ数日、勤務中は食事もろくに取らずに仕事に集中していた。
ワークショップでの神経疲労も重なってだろう、もう三日ほど私は便秘で、その上、胃液だけの嘔吐を繰り返している。
とりあえずの仕事を午前中で片付けて、JRに飛び乗ったのが1時56分。
ホームで「電車が10分遅れます」のアナウンスに、一瞬、血が上りそうになった。
冷静に考えれば、通し稽古は3時からだから、電車が10分程度遅れようと、まだ充分時間に余裕はあるのだが、逸る気持ちが、わずか10分の遅れを苛立たせてしまうのである。
こういう心理はよくない、と自分を落ち着かせようと胸をなでる。
博多駅で地下鉄に乗り変えて、天神へ。イムズホールに到着したのが2時25分。
ポスターが貼られていたのに気付いたが、私がかなり大きく写っていたので、思わず引いてしまった。昨年に比べて少しは痩せた気でいたが、そうでもない(笑)。
客観的に自分の姿を見る機会が少ないので、どうもこれが自分だという自覚がしにくい。私の演技が上達しないのも、自分のことがよく分かっていないせいだろう。
喉がいがらっぽくなっていることに気付くが、喉スプレーを持ってくるのを忘れた。無理してあと6時間を通すしかない。
午前10時からの練習は始まっている。
舞台は、ちょうどしげ。たちのシーンを演じているところだった。
しげ。は、前回北九州ワークショップの時に演じた「キャサリン」と同じ衣装を着ている。チャイハネで買った、アジアのどこの国とも知れないピンクでど派手なシルクっぽいブラウスである。
髪型は私の「森田さんと同じにしてみたら?」という意見で、チョンマゲ風。しげ。は森田さんほどに髪が長くはないので、きちんとしたマゲにはならずに、『げんしけん』のオギウエのようになっている。
着替えるのが面倒くさいしげ。は、この格好のままで電車に乗ってきているのだ。どう言えばいいものか、と思うが、あたまのおかしなやつには何を言ってもムダであることは先刻承知なので、特に何も言わない。
驚いたことに、舞台上でしげ。はまた「キャサリン」と呼ばれている。キャサリンはあくまで前回のキャラクターであって、今回は全く別のキャラだ。出演者たちが打ち合わせてそうしたのかもしれないが、これは明らかに違和感がある。
案の定、森田さんの「キャサリンはやめてね」の声が掛かり、「じゅんこ」に変更になる。
あとで聞いたら、これはしげ。も知らない、相手役のいきなりのアドリブだったそうだ。多分、しげ。が北九州参加者の誰かから「キャサリン、キャサリン」と呼ばれているのを聞いて、ふと思い付いたのだろう。
つまらない駄洒落を飛ばすオヤジのように、つい空気を読めない悪ふざけをしてしまうのも博多人の特徴のようなものだ。
「やりすぎたらちゃんと抑えるから、ともかく引いたりしないで前に出るようにやってみてね」とは森田さんの指示だが、現実にいくらでも前に出たがる博多人が多くて、森田さんは内心、「博多ってどんな土地だ」と驚いていたのではないだろうか。
3時を回る前に、区切れもなく、通し稽古が開始される。
昨日、ようやく上演の組み合わせが決まったばかりで、殆ど練習らしい練習もしていない。
それどころか、われわれのチームなどは、四人のうち、二人が公演時間には間に合わず、6時半からの一回目の公演には代役を立てなければならない事態になっている。
我々が与えられているのは、「家族」という設定、「夫婦喧嘩をすること」という指示くらいのもので、これは殆どぶっつけ本番に等しい。
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11月17日(金)
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