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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■2005年度キネマ旬報ベストテン/ドラマ『Ns’あおい』第一回/『アンフェア』第一回
現地に着いてみると、予想通り、周辺の道路は路駐の車で埋め尽くされていた。もちろん違法駐車なのだが、今日ばかりは警察も取り締まる気はないのだろう。何百メートル続いているか分からない車の列はちょっと怖いくらいである。当然、しげはどうしていいやら分からず、ただぐるぐると神社の周辺を回るしか仕方がなかったのだが、ちょうどその時、父から連絡が入った。
「いやあ、参った(シャレかい)。お参りの列と福引の列、間違えて並んでしもうて、今まで時間がかかってしもうた」
「それはいいから、今はどこにおるんね」
「神社の裏つて言って分かるや」
「さっきから、その辺、ぐるぐる回りようばってん、お父さんがどこにおるか見えんよ」
「なら、大通りまで出るけん、そこで拾っちゃり」
「わかった。どこに出たか教えてくれたら、そこに向かうけん」
電話を切って、すぐに父から電話があって、近くの建物の名前を言ったので、私にもしげにも場書は見当が付いたのでそこに向かった。
2、3分で、首尾よく父を発見することができたが、破魔矢か何かを持っているのは当然として、なぜかマスクをしている。風邪でも引いたのかと思ったが、「わざわざ呼び付けてごめんね」と謝る声は特に喉を傷めている風でもない。どうしたのか聞いてみると、「昨日、親戚と温泉に行ったら、酔っ払ってホテルの玄関ところで転んだったい」と言う。
「また、酒、飲んだんね!」
「ちょっとだけや。それにそれまでは全然、飲んどらんもん」
「でも酔っ払ったっちゃろ? もう少しでも飲んだら酔うごとなっとっちゃろうもん」
「ばってん、これはやめられんもん」
なんだかもう、ワガママな子供の言い訳を聞いているようなもので、気が萎えてしまう。それにボケも進行しているようで、「十日恵比寿に僕が最後に行ったのは、いつやったかね?」と聞いたら、「お前とは十日恵比寿に行ったことはなかぜ」と答える。んなことはないんで、小学校のころまでは縁日目当てで両親に連れて行ってもらっていたのである。第一、一緒に行っていないのだとしたら、小学生の私は、家で一人ぼっちでほったらかされていたというのだろうか?
まあ、ボケ老人の言葉にいちいち逆らったって仕方がないので、「ああ、そうだっけ」と適当に相槌を打って、「腹減った」とうるさい父を連れて、帰り道の途中の「ジョイフル」に入った。私はもう食事を済ませていたので、ミニサラダだけを頼んだが、父は何の屈託もなく、生姜焼き定食だったか何かを頼んでいた。節食する気もサラサラないようだし、糖尿病が悪化するのも時間の問題だろう。もう父の行動にも私はすっかり諦めモードである。
しげはしげで、私に付きあって久しく糖尿病食ばかり食べていたから、我慢の限界が来ていたのだろう、食欲が一気に爆発したようにトンカツ定食だったかなんかにむさぼりついていた。私は肉に執着はないので、二人がガツガツ食ってても別に羨む気持ちもないのだが、普通、こういうときはもうちょっと軽いモノを頼むとか、遠慮するもんじゃないのかと思うのだが、自制の効かないヤツラだとつくづく思うことである。
ドラマ新番組『Ns‘あおい』第一回。
こしのりょうの原作コミックは、一巻だけ読んでたんだけど、あまり魅力は感じなかった。巷で言われているようにナース版『ブラック・ジャックによろしく』って二番煎じ感が強かったし、絵柄も新鮮さに欠けていたからである。『ブラック・ジャックに』もそうだったけれど、いかにも医療界のダークな部分を暴いてリアルな物語のように見せかけてはいるけれども、人物造形や関係図は、若くて熱血な主人公がいて、悪徳な職場に放り込まれて苛められて、けれどもそこでシニカル(ないしはおどけている)ではあるけれども理解ある協力者も現れて……という、医療ものに限らず、学園ものやらでも散々使われてきたパターンの繰り返しで、いかにも「作りもの」めいているのだ。
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01月10日(火)
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