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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■確執なのかなんなのか/ドラマ『熟年離婚』第一話
 「空港の国際線に行く道の途中に、焼肉屋ができとろうが、そこへ行かんや」。
しげに「どうする?」と、“一応”聞いてみたが、「どう…」の段階で既にしげの目は爛々と光っていたのであった。

 父を店まで出迎えて、件の焼肉屋に向かう。
 車の中で、父が「あさっての温泉行きのことは姉ちゃんにはまだ言うとらんったい」と言うので驚く。
 「なんで?」
 「言いたくないと」
 そう簡単に言われてはミもフタもないが、頑固というよりは駄々っ子という感じだ。年を取ってきて、もういくらワガママを言っても構わない気分になっているような感じだ。
 「お前には言うとらんばってん、姉ちゃんとの間ではいろいろあっとうと。お前が聞いたら絶対怒るけん、言わんけどな」
 「なら聞かんよ」
 父は私の性格をからっきし理解していないので(親くらい子供に幻想を抱いている存在はあるまい)、そんな風に勝手に決めつけるのだが、多分、私は何を聞いても怒らないと思う。どうせ姉が私の悪口を言ってたとか、その程度のものだろう。内容も「ボケ老人(=父)を私に押し付けやがって」とか「本当は店を私に譲るのが惜しくなったんだろう」とか、見当がつく。けれど、あの頑固な親父のそばにずっといれば、それくらいの愚痴は出て当然だ。それなら聞いても聞かなくても、姉を恨みに思うことはない点では同じである。
 しかし、毎度毎度、会うたびに姉の悪口を聞かされて「店を辞める」と聞かされてもう一年くらい経つ気がするが、いっこうに仕事を辞める気配がない(辞めると言って廃業広告まで出したのに取りやめた)。腹を立てながらも、毎日姉と顔を着き合わせてやっぱり一緒に仕事をしているのである。短気な癖にのんびりしているので、私にもこういう父の優柔不断な性急さはなかなか理解しがたいのである。

 焼肉屋はかなり分かりにくい位置にあって車も停めにくかったが、回転して日も浅いので、今のところはなんとか繁盛している様子である。
 しかし、値段がバカ高かったのには恐れ入った。ファミリーセット、ロース、カルビ、豚バラ、ウィンナーに焼き野菜、四人前で7000円というのはちょっとねえ。いい肉使ってたのは食べてみて分かったから、ダメな店ではないのだけれど、庶民にはやはり「ウエスト」でちょうどいいと実感したことである。

 
 ドラマ『熟年離婚』第一話。
 アニメの新番組があまり見られない分、ドラマの新番組を漁って見ている感じの最近であるが、『ブラザー・ビート』とどっちを見るか迷って、こっちを選ぶ。まあ、渡哲也で選んだってことだね。
 離婚を切り出す奥さんは松坂慶子なのだけれども、平時子よりは役柄に合っているとは言え、渡哲也に相対するとやはり今ひとつ「軽い」気がしてならない。『義経』に引き続いての夫婦役だけれども、何かこの二人でやらなきゃならない事情でもあるのだろうか。
 台詞を字面だけで追っていると、こりゃもう、渡哲也の方が圧倒的に横暴なのである。家族のことを考えているつもりになって自分の価値観を押し付けているだけだし、息子の交際相手のことを「子持ちで離婚調停中の夫がいるじゃないか」と悪し様に言うのは、息子思いから口走ってしまったにしても、ちょっとひどすぎる。もうちょっと事情を聞いてあげたら、と家族がたしなめるのも当然である。イマドキ、ここまで時代錯誤な親父がいるもんなのかねえ。
 ところが渡哲也が毅然としてこれを言うと、これが全然ワガママに聞こえなくてねえ(笑)。軟弱に「事情をよく聞かせてみろ、お前が本気なら俺も真剣に考える」なんてモノワカリのいい親父なんかを渡哲也に演じてほしくはないのである。でもおかげで「アナタのそういうところについて行けないんです!」と泣きじゃくる松坂慶子の方がワガママに見えちゃうのは困ったもので。

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10月13日(木)
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