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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■休日の朝は寝てるってば/『名探偵博覧会T 真説ルパン対ホームズ』(芦辺拓)
舞台をパリ万博に設定し、川上音二郎・貞奴夫妻を登場させるなど、実在人物を絡める手法もこういうパスティーシュものの定番で、「日本人には」受ける趣向になっている。けど、外人さんに「サダヤッコ」と言って、どれだけ通じるのかね? ピカソが貞奴のスケッチを遺しているのは事実だけれども、そのことを知っている海外のミステリファンがいるものかどうか。
つまりこの小説の弱点は、外国語訳されてもそんな趣向は全然ガイジンさんには分からないってことだったりする。つまりやっぱ「内輪受け」なんだわな。
まあ、内輪受けだろうがなんだろうが、肝心の事件と謎解きが面白けりゃ、文句はないんだけれども、これがもう、ルパンとホームズの金看板を背負っといて、こんなチャチな事件かよ、と悲しくなるようなシロモノなのよ(涙)。
ルパンの師匠が、実は実在の「あの人である」という点がメイントリックに深く関わっていて、それが誰なのかをわざと最後まで隠しているのだが、隠しているからこそ、これが謎を解くヒントになると逆にバレてしまう。つか、超有名人だから、ちょっとした表現で、すぐに誰なのか見当がつくんだよ(涙)。全く、なんで今更、こんなありふれたトリックを臆面もなく使えるのかね。
トリックもチャチだけど、そもそも語り口のヘタクソさが小説をつまんなくしているのだ。芦部さんの小説、基本アイデアはいいんだけど、文章でいつも損をしている。なんか初期の高木彬光みたいなんだよね。
一応、ホームズやルパンを読み出した中高生は楽しめるかも、ということで限定付きのお勧めね。長年のルパンファン・ホームズファンほか、ミステリファンにはお勧めしません。
10月10日(月)
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