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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■伝わらないことばかりだけれど/『金魚屋古書店』2巻(芳崎せいむ)
 こういう「無難なシーン」だけをベストと言われたって。納得の行くものではないが、つまりはドリフターズはもう「過去の歴史」になってしまったということだ。「20年ぶり生コント」という触れ込みの簡易セットでの「長さん抜き」のコントが、旧作の焼き直しでしかなかったことが、そぞろ寂しさを感じさせるばかりである。


 筒井康隆『ポルノ惑星のサルモネラ人間 自選グロテスク傑作集』(新潮文庫)。
 収録作品は表題作のほか、『妻四態』『歩くとき』『座右の駅』『イチコの日』『偽魔王』『カンチョレ族の繁栄』。
 なんだ、以前、新潮文庫に収録されてた短編ばかりじゃないか、なんでそれを今更出すのだ、と思って巻末の作品リストを見てみたら、これらの作品を収録していた『宇宙衛星博覧会』『串刺し教授』『エロチック街道』『薬菜飯店』『将軍が目醒めた時』、現在全部絶版なのである。筒井さんが「出版不況の中でも、俺の本は売れている」と豪語していたのは十年ちょっと前だったと思うが、筒井さんの本ですら売れなくなっているのだ。若者の活字離れはそこまでひどくなっているんだなあ。
 本ばかり読んでたらバカになるぞと自嘲的に言うことの多い私ではあるが、こうなると「本を読まないと馬鹿な大人になるぞ」とミヤベ先生の言を借りたくなるところである。ハッキリ言って、電撃文庫とか富士見ファンタジア文庫しか読んでないガクセイさんとかと話してみると、本当に馬鹿なんだもの。
 それはそれとして、久しぶりに読み返してみた『ポルノ』であるが、ちょうど筒井康隆が純文学に流れていくころの作品群であるので、せっかくのSFの面白さがブンガクのオブラートに包まれたせいで、「適度につまらなく」なっているのが残念である。それでも当時は筒井康隆はあくまでSFを志向しているのだと思い込もうとして、無理に面白く読んでいた物だったが、今は「この先を書いてくれないと面白くならないのに」とどうしても思ってしまうのである。
 でも、オリジナル版にはなかったポルノ惑星の異様なモンスターども、「ヨコイタクラゲ」「ヤブサカワニ」「タタミカバ」「スズナリミミウサギ」「ジャバラウシ」「タラチネグモ」「バクブタ」「ワスレガタミ」などを、あすなろ舎がコレクションフィギュアとして製作したものの写真が掲載されていたのは嬉しいおまけであった。


 マンガ、芳崎せいむ『金魚屋古書店』2巻(小学館)。
 なつかしマンガを題材に、古書店「金魚屋」に集う人々を描くシリーズも、もう四巻目(前シリーズ『金魚屋古書店出納帳』全二巻からの続き)。
 正直、エピソードによっては出来不出来があるなあと思っていたのだが、巻頭の第八話「彼の風景」は文句なしの大傑作だ。マンガ読んで泣かされたのって、久しぶりじゃなかろうか。いや、泣けるマンガが必ずしも面白いマンガだとは言えない。中途半端なドラマであっても、それなりに「泣かせどころ」のシーンさえあれば、あとはワヤでも何となく泣けてしまうものだ。しかし、一つ一つ、登場人物や設定をきちんと積み重ねて物語を紡ぎあげ、その末に「感動」を構築するドラマだってちゃんとある。これがそうだ。
 生徒会副会長の関口は、名前だけで実力もないのに横暴な会長の腰巾着でいることに嫌気がさしてきている。そんなときに、自分の机の中で見つけた手塚治虫の『アドルフに告ぐ』。それは、定時制に通い、関口と同じ机を使っていた、名前も偶然同じな「関口」が忘れていった本だった。『アドルフ』を夢中になって読んだ関口は、気が付くともう一人の「関口」に、本を読んだ感想を書き連ねていた……。

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10月02日(日)
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