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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■これが多分最後の高峰秀子インタビュー/『COMIC新現実』vol.6(大塚英志プロデュース)
 病床の成瀬監督が、高峰秀子に「あれも撮らなくちゃね」と言い残して死んだ。「あれ」とは、成瀬監督が撮りたがっていた、「白バックの映画」である。役者の演技だけを見せるための映画だ。その主演に高峰秀子を使いたがっていたのだ。
 こういう監督と出会っていて、それでその監督ともう二度と出会えなくなれば、「女優おしまい」にもなるだろう。それ以上、高峯秀子の心理を詮索する必要はない。
 高峰秀子は森雅之が映画界から離れて行った理由についても語る。『浮雲』は高峰秀子の代表作として、日本(いや、世界でも)映画史上に残る名作の一つとしても高い評価を受けた。しかし、森雅之には殆ど何の賞ももたらさなかったのだ。成瀬監督も高峰秀子も、森雅之がいたからこそ『浮雲』は成功していたと確信していたのに。
 森雅之は映画出演を減らして行き、舞台に移って行く。そういう役者が多いことが、日本映画界の役者に対する扱い方のいい加減さを証明していると思う。

 斎藤さんが、「高峰秀子に語らせたい」と思った気持ち、悔しさは、切ないくらいに伝わってくる。しかし、斎藤さんの悔しさを受け止められる人間がこの現代にどれだけいるだろうか。
 現代人はかつて日本を築き上げてきた人々に対する敬意も愛情も全て失ってしまっている。そんな現代に高峰秀子が自ら関わっていくことなどありえないではないか。高峰秀子に「(日本映画史に)興味ない」などと言わせるようにしてしまったのはどこの誰か。
 「映画ファン」と名乗りながら、日に一本の映画も見ない、「あなたたち」である。

08月29日(月)
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