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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ボンカレークラシック/映画『キャンドルシュー セント・エドモンドの秘宝』
 まず主役のケイシーを演じるのがティーン・エイジャーだったころのジョディ・フォスター。もちろん、『タクシー・ドライバー』『ダウンタウン物語』などで、天才子役なんて言葉ではとても括りきれない名演を披露していたあとの出演である。フォスターは少女時代の一時期、激太りしていたこともあったのだが、15歳だったこのころには幾分スッキリしてきていて、かなりアクションもこなして(吹き替えかもしれないが)小生意気なケイシーを好演している。
 脇を固めるのは、『ピンクの豹』『007/カジノ・ロワイヤル』『名探偵登場』のデヴィッド・ニーブンに、『追想』『探偵スヌープ姉妹』『ミス・マープル』のヘレン・ヘイズ。ラッフルズやファントムを演じた「怪盗俳優」のニーブンと、「お婆ちゃん探偵」が持ち役のヘイズが共演、という図式が面白い。
 「イギリス風味」を出すのに、ニーブンは必要不可欠なキャストである。「執事」はいかにもな役だが、キャンドルシューがジリ貧なのをヘイズに気付かれまいと、“既に辞めさせてしまった”運転手、庭師、更にはヘイズの友人の「大佐」までを変装して演じる。まるでアレック・ギネスか片岡千恵蔵だが、ニーブンはいかにも楽しそうだ。もちろん「見りゃ一発で同一人物って分かっちゃうじゃん」であるのだが、そこは言いっこなし。馬に乗れないのにムリヤリ乗せられて、茂みの向こうで落馬して、馬だけが走って出て来るというギャグは『七人の侍』のパクリだけれども、まあこれも許しちゃおう。
 ヘイズは『追想』で演じた皇太后をセルフ・パロディにしたような役どころ。フォスターが「アナスタシア」に当たるわけだね。ニーブンとの大広間でのダンスシーンも『追想』を髣髴とさせるが、ファミリー映画だと思ってこの映画を見に来たオトナのお客さんへのこれはサービスだろう。ここで、ヘイズが実はニーブンの一人四役にちゃんと気づいていたことも明かされる。本映画中、一番「粋」なシーンだ。尺が短いのは仕方がないが、このあたりはもっと情感を込めて撮影して欲しかった。
 そして、愛しのレオ・マッカーン! 『怪獣ウラン』の、『ピーター・セラーズのマ☆ウ☆ス』の、『新シャーロック・ホームズ/おかしな弟の大冒険』の、そして何よりも『プリズナー.6』最多出演「.2」役の、あのマッカーンである。その大兵肥満の体をゆすって笑う、強欲だけれどもやっぱりどこか抜けてるところのある悪役ぶりは、マッカーンの独擅場である。この人が出てくるだけで映画のランクが一つ上がるように見えてしまうから不思議だ。ニーブンとの「傘対斧」の対決に続く、フェンシング対決、槍対決と“意味もなく”エスカレートしていくおかしさは、実際に映画を見て確かめていただくほかはない。
 悲しいことに、ニーブンもヘイズもマッカーンも既に鬼籍の人である。

 お話自体はジュブナイルであるために、ミステリとしての骨格は弱く、案外あっさりと財宝が見つかったりして、物足りなさを感じはするのだが、これはまあイギリス風の人を食ったファルスとしての味わいを楽しむのが主眼だろう。
 そのあたりの「イギリスらしさ」は随所に現れていて、何より、フォスターが最後まで「ニセモノ」のままなのがいい。普通のディズニー映画のセオリーに従えば、最後は「実はニセモノと思わせといてホンモノの孫」ってご都合主義で終わらせてしまいかねなかったところである。
 ラストで「本物の孫が見つかったらどうする?」というフォスターの問いかけに、ヘイズが「ここにいるわ」と答えるのが実にいい幕切れである。これは原作にもあったセリフなのだろうか。
 ミステリファンでイネス原作の映画があったことを知らず、ディズニーファンでこんな実写映画があったことを知らず、ジョディ・フォスターファンで彼女にこんな少女時代があったことを知らないといった、いろんな意味で知られていないことがもったいない映画である。

08月27日(土)
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