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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■トラノアナ潜入記/舞台『弟の戦争 GULF(ガルフ)』
平和な世界では戦争はファンタジーでしかない。しかしそのファンタジーが容易に現実の戦争に反転し、シンクロすることを、この装置は見事に表現している。ここでも「運」の問題が浮上してくる。工事現場のドリルを握る手が、運が悪ければ戦場で銃を持つ腕に変わっていたかもしれないのだ。ラグビーボールを握る手が、手榴弾を握る手になっていたかもしれないのだ。しかし、もしもそうなっていたとしても、私たちにはその運命を帰る力などないのだ。こんな「不公平」があるだろうか?
そして、この戦争の悲惨を回避する唯一の手段を、この物語は極めて冷静に示してくれる。キレイゴトだけの反戦映画『ハウル何たら』のように、電話一本で終わるようなアホな解決方法ではない。極めて実効性の高い、現実的な解答である。
それは狂うことである。
それ以外に方法があるか?
それ以外に戦場にいても戦わず、敵を殺さずにいる方法があるか?
自らが死ぬのでなければ、戦争の残虐、戦争の悲惨から脱出する方法はないのだ。運命に逆らう方法はそれしかないのだ。世界が既に狂っているのだから、我々個人は更に狂うことでしか、正常にはなれないのだ。
「あれから何が変わったか。弟は変わらない。弟はずっとあのままだ。変わったのは僕たちだ。父はラグビーを止めた。母は仕事を辞めた。そして僕は……」。
しかし、現実の我々は、今のこの「ファンタジーとしての平和」にいつまでもしがみついているだろう。スポーツという擬似戦争に狂喜し、政治という擬似社会を構築する方法論に期待し、実はそれが「ファンタジーとしての戦争」を夢見る行為であることに気付きもせずに日々を過ごすことだろう。
だから政治とスポーツを嬉々として語るような既知外連中は鬱陶しいんである。
芝居を見終わったあと、鐘下辰男さんとの懇談会などもあったのだが、そこまで鴉丸嬢を付き合わせるのは申し訳なかったので、そそくさと会場を後にする。
鴉丸嬢、「事前に何も筋とか知らなかったから、面白かった」との感想。
確かに、映画にしろ演劇にしろ、先入観がない方が虚心坦懐に作品を見ることができるし、楽しいに違いないのだが、これだけたくさんのモノが溢れている状況では、完全に情報をシャットアウトもできない。ちょっとした粗筋とか、そういうものを参考にして、「この映画を見よう」とか選択の基準にするしか仕方がないのである。まあ、事前情報を仕入れていても、それに振り回されない冷静さを培うことが大切だろうなと思うのである。
事前情報がなさ過ぎるのも良し悪しだというのは、時には大きな勘違いをしてしまうこともあるからだ。
鴉丸嬢、「途中まで、外国の話じゃなくて日本の話だと思ってた」と言ってたが、貰ったパンフの表紙くらいは見ておこうよ。作者、外国人だぞ。それに、冒頭からトムとかアンディーとか、名前が出てたんだがなあ。それとも鴉丸嬢のご近所には「トム山田」とか「アンディー吉田」とか、そんな人の方が多いのだろうか。
箱崎の「ゆめタウン」の中華な店で、三人で食事。
どうやって作ってるんだかよく分からないが、「黒いチャーハン」があったので注文してみる。見た目は本当に黒かったが、味は普通のチャーハン。別に外れではなかったからいいんだけれども、ものすごい味を想像していたので、美味いのに拍子抜けであった。
食事をしながら、例の天神にできた「メイドカフェ」の話を鴉丸さんにしてみる。「バイト募集してるみたいだけど、やってみたい?」(もちろん冗談で聞いてみたので、其ノ他君、怒らないでね)。
年齢制限は18歳から25歳までだよ、と言うと、「年がギリギリだから」と首を横に振った。隣からしげが「若く見えるから大丈夫」と茶々を入れる。
「高校のころは年上に見られてたんだけどね。最近は『大学生?』とか言われるよお」
「いいなあ、私なんか最近全然、歳を聞かれない。メイドは無理かな?」
確かにしげは見た目年齢不肖なところがあるが、20代に見られたいというのはいくら何でもおこがましいというものであろう。
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08月25日(木)
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