ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491659hit]
■オトナもコドモも/『彼氏彼女の事情』21巻(完結/津田雅美)
知識がオタク方面に偏っているだけならご愛嬌ですむのだが、『アパッチ野球軍』を紹介する項目で「アパッチ」という語句を「ネイティブアメリカンの蔑称」と記載していたのにはのけぞった。言うまでもなく、「アパッチ」というのはそのアメリカ原住民の一部族の名前であって蔑称でも何でもない。自主規制や用語規制の歪さを告発する本が、かえって差別的な誤解を広めるようなウソを書いてどうするのかね。
まあ、一応、封印作品の資料としては使えるけれども、どうしてその作品が処分を受けることになったのか、その事実関係の検証は不十分なものが大半である。斜め読みするだけであまり内容を信用し過ぎないほうが無難だと思われる。
マンガ、津田雅美『彼氏彼女の事情』21巻(完結/白泉社)。
長編マンガはやはり終わってみなければ具体的な評価はしにくいものだけれど、まあ実質的な物語は全巻までで終わっている。最終巻は後日談も含めてキャラクターの整理編、と言った印象。
正直な意見を言わせてもらえれば、有馬の心の闇の謎とやらをやたら長い間もったいぶって引いていたので、いったいどんなに悲惨な運命に弄ばれてきたのかと、ちょっとハラハラしながら読んでいたのだが、結末は「えっ? この程度のことでアンタ、自分のことを不幸って言うの? それ、人生舐めてない?」と言われても仕方がないくらいありふれたものであった。ジャリん子チエが聞いたら「不幸ぶってるんやないで、あほ」と一刀両断されてしまうだろう。
まあ、このマンガの珍しいところは、少女マンガにしては一切ヤンキーや不良が出てこないという点にあった。まあ、これまでのマンガがあまりにも不良を美化したものばかりだったので(ヒーローはバイク野郎でたいていはバンドをやってたりする)、そういうものに対するカウンターカルチャーとして機能していたとは思うが、だからと言って、登場人物が殆ど全て一流の才能の持ち主ばかりというのは設定に無理がありまくりである。多分作者はヤンキーマンガが嫌いでこんなムチャクチャな設定で押し通してきたのだろうけれど、作者自身の「優等生臭さ」(本当に優等生かどうかは知らない)がそのままマンガの「臭さ」にも直結してしまっていたのが、マンガがどんどんつまんなくなっていった原因であるように思う。
こういうとファンは怒るかも知れないけれど、登場人物を「天才」に設定したいんだったら、ちゃんと天才としての行動、実績をマンガの中で描かなきゃいけないわけね。口で言ってるだけでやることなすこと「凡人」だったら、ハッタリかますだけにしかならないの。有馬も雪野もごくフツーの人間なのになぜか「天才」ってことになってるのは作者が自分で「天才」を描けるだろうと思った自信の現れなんだろうけれども、SFとかファンタジーならともかく、基本的にリアルな学園ドラマでそれやっちゃうと、結果的に作者の「非才」を露呈することにしかならないのだね。現実に「天才」なんてそうそういるわきゃないのである。
これで完結だと言うのに、あとがき等でアニメ化のことについて作者が全く触れていないのも何かワケアリだね。よっぽど賛否両論の騒ぎが鬱陶しかったものか。これは続きのアニメ化はまずないな。
08月23日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る