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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■政治を笑えば政治に利用されるということ/映画『チーム★アメリカ ワールドポリス』
 いや、映画見ている最中には大いに笑ったけどね。エロでグロで不謹慎なギャグは大好きだ。マジメな人は「やりすぎで笑えない」なんて言って鼻白むだろうが、人形たちは実に大らかにSEXを謳歌し、単純に殺戮されていて、そこにギャグとしてのひねりは殆どないに等しい。大人向けではあってもギャグのレベルそのものはザ・ドリフターズの「うんこち○ちん」と同程度の幼稚なものなのである。しかしその「幼稚さ」は逆にトレイとマットの「武器」になっていて、戯画化された人物はどんなにその特徴を誇張されて造詣されていても、みな溌剌としていて愛らしく(恐らくはパロられた本人以外の人にとっては)魅力的なのである。
 ちょうど小林よしのりが薬害エイズ訴訟被告の安部英を戯画化したときに「思い切り憎たらしく描いたつもりなのにかえって可愛くなってしまった」と慨嘆したように、カリカチュアは差別化であると同時に対象をアイドル化してしまう効果もある。町山さんは「金日正だけが可愛く描かれている」とか日記に書いているが、決してそんなことはない。頭でっかちアレック・ボールドウィンもスーザン・サランドンおばさんも知恵遅れのマット・デイモンも自爆テロリストのマイケル・ムーアも全然可愛いのだ。
 場内はなぜか若い女の子のお客さんのほうが多かったが、彼女たちもけらけら笑いっぱなしだった。特に受けていたのは、マイケル・ムーアの自爆シーンと人形セックスのシーンと、「マイケル・ベイはどうして映画監督が続けられるの? 『パールハーバー』は糞だ♪」の歌のシーンであった。私も、これが聞けただけでも大満足だ。


 帰宅して、先日入手した舞台DVD『AGAPE store♯8 しかたがない穴』を見る。
 去年、福岡公演もあったのだが、つい見に行き損ねていたので、DVDででも見られるのは嬉しい。
 脚本はペンギンプルペイルパイルズの倉持裕の書き下ろしで、演出はもちろん我らがG2氏である。コメディが多いG2演出作品であるが、今回はホラー・コメディあるいはブラック・コメディ、あるいは不条理ギャグホラーとでも言うべきもの。笑って見ているうちにどういうわけかだんだんとこちらの神経の方が妙に敏感になるような不安になるような背筋に怖気が走るような、あるいはちょっとばかしトリップしてしまうような、そういうフシギな気分にさせられてしまう芝居である。

 南米にある架空の国「ガルガル」がこの物語の舞台。
 そこには大昔に陥没した巨大な穴があり、研究所がその穴の底に建設されていた。 その不思議な生態系を調査するために、調査団が派遣された。しかし、ヘリコプターでやってきた調査団は、骨折し意識を失った一人のガルガル人を残して、全員なぜか引き返してしまう。
 現地に取り残されたのは、調査とは直接関係のない四人。通訳の蜂賀(松尾貴史)、ノンフィクションライターの恵美(秋本奈緒美)、恵美の付き添いでカメラマンの天川(山内圭哉)、女医の留里子(松永玲子)。研究所に常駐していた所員の佐藤(小林高鹿)は、二重の六角形から成る奇妙な宿泊施設に彼らを案内する。
 その閉ざされた空間の中で調査団が再来するのを当てもなく待つうちに、5人の神経は少しずつおかしな方向へ傾いていく。
 蜂賀は自分の持ち物が全て「微妙に違うもの」に変わっていると主張する。 留里子は新しい病気の創作にふけるようになる。天川は「この世にあるとは思えない動植物」を執拗に追いかける。彼らの生態を取材し「記録」しはじめる恵美。しかし彼女は一本のペンも持ってはいなかったのだ……。
 そして穴の秘密を知っているらしい佐藤は狂気を帯びはじめた彼らを見ながら沈黙を守り続けていた……。

 穴の底の物語、と聞くと安部公房の『砂の女』が思い出されるが、あれが一軒家の男女だったのに対して、倉持裕が描く「穴」は更に複雑化し、「穴の底の迷宮」での五人の男女の絡み合いが繰り広げられる……と言っても、ベースはコメディなので、男女のモツレとか、現実の男女であれば起こり得るようなドロドロまでは描かれない。

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07月31日(日)
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