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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■人生ホリエモン/『MORNING GIRL』(鯨統一郎)
 マンガも読んだが、最近はその感想は書いても小説の感想はなかなか書けなくなっているので、前述したことと矛盾はしてるが、今日はたまには小説もということで。
 いやね、もう一つ小説の感想が書きにくい理由を挙げるとね、読む本がミステリーやSFに偏ってるんで、ネタバレしないように書くのってムツカシイのよ。

 鯨統一郎『MORNING GIRL』(原書房)。
 タイトルは多分、ショーン・キャシディ(『刑事コロンボ』ファンの私には俳優ジャック・キャシディの息子としての印象の方が強い)のデビュー曲『素敵なモーニング・ガール』から取られているのだろう。「モーニング娘。」の方ではないと思う。ウンチク好きのこの作者にしては、そのあたりの説明が作中にないのが首をひねるところである。
 どうしようもない駄作も多いこの作者の新作をどうしても追いかけてしまうのは、やはりデビュー作『邪馬台国はどこですか?』の印象が鮮烈だったからである。荒唐無稽に聞こえる論理のアクロバットの向こうに、「もしかしたら一抹の真実が含まれているかも」と感じさせるものがあって、それがあの連作ミステリの魅力になっていた。
 だから、「人はどうして眠るのか?」という、生命の根源について問いかけていると言ってもいいこの謎に、いったいどんな解答を出してくれるのか、ワクワクしながら読み進めていったのだ。
 ところが本作はミステリではなかった。未来宇宙を舞台にしたSFとして書かれていた。SFとミステリは本来別の手法によって成り立っているものだが、この背反するように見える二者を見事に融合させている作品は決して少なくはない。鼻祖アシモフの『鋼鉄都市』は言うまでもなく、本邦の『キッズ・ピストルズ』シリーズや『バルーン・タウン』シリーズは充分成功例と言えるだろう。
 ある一定のSF設定・法則が仮構され、そのワク内においてのみトリックが成立するときにSFとミステリは美しいランデブーを果たす。では『MORNING GIRL』はどうであったか。いきなり決め付けてしまうが、残念ながら、本作もまた鯨作品の駄作群にまた一つ名を連ねる結果になってしまっている。
 本作がSFとして描かれたのは、リアルなミステリとしては結局「眠り」の謎を解明することが不可能だったためなのだな、と断定せざるをえない。すなわち、「SFなら何でもアリだな」という「逃げ」を売っているのである。実際、1/3も読み進めないうちにネタはすぐに割れる。かなり鈍感な人でも、主役の二人、スティーヴとダイアンの間に生まれた子供の「名前」を聞いた時点で、「ああ、これもアレネタだったんだな」と気づくだろう。
……なんかもうね、「もう止めて」って言いたいくらい、使い古されたネタなのね。客ナメてるだろ、鯨! 鯨さんがこの場にいたら、そう罵倒して、スリッパでアタマをパシーン! とひっぱたいてやりたくなるくらい、陳腐なのである。
 「小説は文庫で買う」がモットーな私だが、およそ「原書房」という、有名とまでは言えない出版社から発行されている本作、どこかの出版社に買い取られて文庫になるまでには時間がかかるだろうなと、思い切ってハードカバーで買ってしまったが、1600円をドブに捨てた気分である。もう、ここいらでやっつけ仕事はやめて、鯨さんにはもちっとマシなミステリを書いてほしいんだけど、もう才能が枯渇しちゃったのかなあ。いくらなんでもちょっと早すぎるよなあ。
 しかし、「人類がどんどん眠らなくなっていく」って言っても、身体的影響がなけりゃ特に問題にしなかったり、喜ぶ人もある程度の割合でいそうな気はするけどなあ。少なくとも私は本が読めるようになるから絶対喜ぶ。
 政府は民衆がパニックにならないように、ウソでも「睡眠時間がゼロになっても問題はありません」と情報操作しようとすると思う。政府に委嘱された研究チームがやたら「眠りがゼロになれば人間は死に至る」という決めつけを繰り返しているところがまず、設定にリアリティを感じられないのである。

07月20日(水)
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