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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■彼女がウェディング・ドレスに着替えたら/映画『犬神の悪霊(たたり)』
「呪い」は、竜次の身にも降りかかってくる。悪夢にうなされる竜次。竜次たちが祠を壊したことを知らされた麗子は、肌身離さず付けていたお守りを竜次に手渡す。かおりから結婚の報告の手紙を受け取った麗子は、「やっぱりかおりは竜次さんのことが好きだったんだわ! あなたに竜次さんは絶対に渡さない! 犬神が憑くなら、私に憑けばいいんだわ!」と叫んで、千枚通しでかおりの手紙を突き刺す奇矯な行動に出る。
祠を壊したり犬が殺された呪いというより、三角関係が原因かい! と突っ込みたくなるが、このあたりから少しずつ物語の破綻は始まっているのである。これからしばらくは泉じゅんファンのための大サービスシーンの連続。シャワーを浴びている竜次に「怖い!」と叫んで服のまま飛びつく麗子。濡れた服を脱がしながらエッチ。しかし犬神は確実に麗子の心を蝕んでいく。様子のおかしい麗子を竜次はいろんな医者に見せるが、一向によくならない。麗子の実家へ連れて帰って、憑きもの落しの祈祷師(三重街恒二)に頼むと、霊媒(白石加代子)はハッキリと「我は垂水から来た」と語る。「“あかめし”くれたら去んでやる」の言葉を信じて、村人たちは赤飯にぎりを持って、麗子の体をなでる。麗子、あえぎ声を上げて身もだえする。当然、着物がどんどんはだけておっぱいポロリ。なんて露骨なサービス! オッパイ攻撃の前では、撫でてるだけで赤飯食ってないじゃん、という突っ込みは不必要かな(笑)。
けれど治療もむなしく、憑きものは落ちなかった。竜次にねっとりとしたキスをしながら、「これくらいで出て行ってやるものか。私も竜次さんのことが好きだったのだ。とうとう竜次さんを奪ってやった!」と言ってニタリと笑う麗子。かおりが乗り移っているってことか? 村人たちは「犬神、出て行け!」とばかりに麗子の体を棍棒でぶちまくる。忘れ雪の降る中に飛び出した麗子は、竜次の腕の中で「東京へ帰りたい」と言葉を残して息を引き取る。 ……えーっと、麗子を殺したの、つまり村人たちなんじゃないの。もちろん、村人たちはそうは考えず、「垂水の家のせいじゃ」と思いこむのであった。
犬神の悪霊とは何なのか? 妻を失って自棄になった竜次は、久賀村の山中で修復されていた祠をまた叩き壊す。そこへ「止めろ!」と叫んで飛び出してくる勇。竜次は勇を容赦なく突き飛ばすが、そこへ麗子の妹、磨子(長谷川真砂美。大林宣彦監督版『ねらわれた学園』の高見沢みちる。超美少女で、もっといい映画に出演してたら、きっとブレイクしてたろう)が飛び出してくる。「勇ちゃんは私の友達なの! 悪いことは何もしないわ!」。勇は自分の家に逃げ込む。追いかけてきた竜次は、かおりが結婚先から出戻って来ていたことを知った。父の隆作(室田日出男)は、「あんたも犬神なんちゅうものを信じなさるんか。わしらも被害者じゃ」と憤りを露わにする。
あれれ? と思ったのはこのあたりからで、垂水家は別に何の呪いもかけていない、という描写がこのあとしばらく続くのである。それどころか、竜次たちが発見したウラン鉱の開発に対して、「核開発に繋がる」と山を売ることに反対していたのも垂水家の人々だったのだ。それじゃあ垂水家の人たちのほうが「正義の味方」じゃん! と驚きの展開である。 ……でも、それなら、麗子たちが死んだのは、本人たちのただの思い込みなのか? いや、西岡と麗子についてはそう言えなくもないけれど、安井の「犬に食い殺される」というのは自己暗示じゃ説明できないぞ? それともあれはただの偶然ってことなのか? と アタマがこんがらがってくる。
垂水家の開発反対を後押しするように、ウラン鉱の作業所でも奇怪な事件が起きる。作業のドリルが突然、何者かに操られたように勝手に動き出し、次々に作業員を殺し始めたのだ。……えーっと、これはどう解釈すればいいんですかね。もちろん「ただの事故」とは絶対に思えない。でも、「犬神」というのは「ドリル」にもとり憑けるものなんですか? いや、疑問を抱いても仕方がない、これは「乗り移っている」んじゃなくて、見えない力でドリルを「操っている」と考えるしかない。だとしたら、ウラン鉱に反対しているのは垂水の家の者だけなので、やはり「呪い」をかけているのは彼ら?
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05月03日(火)
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