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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■カリスマヒロインは生まれるか?(追加アリ)/『PLUTO(プルートウ) 02』豪華版
確かに、浦沢直樹の絵の上手さを賞賛する人に対しては、私も「そんなに上手いか? 浦沢直樹」とちょっと皮肉の一つも言ってみたくはなる。一見、リアルで表情が豊かに見えはするが、実のところさほど微妙な表情を描写する技術に長けているわけではない。その表情パターンは意外なほどに幅が狭いのだ。だから、『YAWARA!』や『Happy!』のようなラブコメに徹したような作品だと、コメディ・リリーフを演じるキャラクターをうまく動かせず、いや、派手な表情をさせて無理に動かそうとして、かえって「浮く」状態を作ることになっていた。ジゴローも富士子も桃子もはしゃげばはしゃぐほどにストーリーを停滞させることが多く、鬱陶しくてかなわなかった。『パイナップルARMY』『MASTERキートン』『MONSTER』と続くシリアス路線が成功しているのは、「表情が少ないほうが物語にマッチして効果的だからである。『PLUTO』も当然その延長線上にあり、ゲジヒト刑事が常に暗く悲痛な表情をしているからこそ、ミステリアスなムードが保たれていると言えるのだ。
だから、さほどマンガ好きでもない人が、「マンガを特に好きでもない自分がハマるくらいだから、これはマンガの中でも特に上質のマンガなのだ」と、マンガを誉めているように見えて実は蔑んでいる発言をするのを聞いたりすると、いささか胸糞が悪くなる思いとてするのである。
“語り口”に関して言えば、同じSFミステリーである『デスノート』よりもかなり洗練されている。「外堀」はかなり埋められているが、肝心要のプルートウは未だに登場しない。フセインそっくりのダリウス14世は原作のチョチ・チョチ・アババ三世に当たるのか、いや、そもそも黒幕はなんとなくトリシア大統領のようにも見えるのだが、どうなのか、「ゴジ博士」とミスター・ルーズベルトは同一人物なのか、謎は尽きない。一番気になるのは、エプシロンはやっぱり女性ロボット? ってところなのだが、その謎が解明されるためにはまた半年待たねばならないのである。ああ、待ち遠しい。
マンガ、細野不二彦『ギャラリーフェイク』32巻(完結/小学館)。
表紙は無精ヒゲでやつれたくわえタバコの藤田玲司。悪徳商売のツケなのか、ついに藤田もホームレス? と勘ぐりたくなるくらい、最終巻にはおよそふさわしくないみっともなさだけれど、正真正銘、これが紛うことなき完結編である。
何だかずいぶん分厚いなあと思ったら、318ページと、いつもより60ページくらい超過のボリュームだった。けれど中身がそれに見合うだけのものかというと、ややネタ切れ気味。ビザの書き換えに帰国したサラとの連絡が付かなくなり、それと呼応するように藤田はアルカイダの資金調達に関与していたという容疑で逮捕されてしまう。果たして、藤田をハメたのはサラなのか? ……ってな展開なんだけど、これまでの付かず離れずの藤田とサラの関係を見てりゃあよ、そんなバカなことは万が一にもありえないんで、サスペンスにも何にもならないのである。ネタもまた幻のモナ・リザで、二番煎じの印象をぬぐえない。これまでの登場キャラクターの再登場もサービスのつもりなのかもしれないが、三田村小夜子館長(冒頭では茶髪で登場するが、すぐに黒髪に戻した)、トレジャーハンターのラモス(結局、こいつの彼女はどうなったんだ?)、スコットランド・ヤードのロジャー・ワーナー警部(残念ながら、今回、変装はなし)、国際美術品窃盗団リーダーのカルロス(以前より顔がさらにコワくなってる)、サラの従兄弟・カジム(未だにサラに未練タラタラ)、調香師・ジャン・ボール・香本(キャラ的にDr.WHOOと区別が付かん)など、“無理やり出してる”印象は否めない。
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04月28日(木)
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