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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■安達祐実は30代を演じる夢を見るのか?/『原作完全版 魔法使いサリー』(横山光輝)
 アクビが混じっていたので、「ふぁあ?」みたいな返事になったが、ともかくイカレた話である。どういうことか、父に問いただしてみたところ、昨日から今日にかけて、店に来るお客さん、みんながみんな「今日か明日、震度七強の地震がある」と口にしているというのである。
 「お前の職場では誰も何も言っとらんや?」
 「さあ、知らんなあ。もしかしたら喋りよったかもしれんけど、僕はいちいち人のうわさに聞き耳とか立てんもんね。大体、うわさの出所はどこね。インターネットとかやないと?」
 「知らん。ばってん、地震雲が出たて言うけん」
 「あ、だったら、それデマ。昔から『地震雲』とか言われよるばってん、全部迷信やもん」
 「でも姉ちゃんは今日、明日、一時的に『疎開する』て言いようぞ」
 「……ばか?」
 しばらく押し問答したが、私が呆れている気配が伝わったのか、父はまだ何となく不承知な口ぶりで電話を切った。「デマに踊らされるな」ってのは、普通、親が子に言うものであろう。予言とか占いとか、オカルトの類は一切信じなかった父が、いったいどうしてしまったものか、これも年を取ったということなのか、そう思うと何だかまた寂しくなる。
 ただ、ここで注が必要になるのだが、父の場合は高齢なせいでこのデマにも何がしかの不安を感じて電話をかけてきたものであろうが、このウワサをまことしやかに右から左へと流している福岡人の大半は、この状況を“かなり”楽しんでいる、ということである。福岡人・博多人気質を知らないヒョーロンカなんかは、多分、地震に対する不安がウワサを呼んでいるのだろうと分析すると思うが、それは福岡人の大馬鹿度を見誤っている。博多人にだってデリケートな部分はあるのだが、こと、“お祭り方面”に関しては、それはまるで発揮されないのである。
 以前も書いたとおり、一般常識から判断するなら信じがたいほどに、福岡人の大半は被災してなお「命が助かったんなら、これも楽しかったイベント」と前向きに考えちゃっているのだ。嘘ではない。私は「今度はどんくらい(震度)のが来るやろか」「死なんどきゃいいと」という台詞を何人もの人間から腐るほど聞いた。もちろん本当に家をなくした人たちはとてもそんな悠長なことを言う気にはならないだろうが、「地震が何か!」と息巻いてる単細胞も結構多いのだ。デマでもいいから地震を待望する気分がウワサに火をつけているのである。
 あまり言いたかないことだが、いつぞや、作家の栗本薫が、北朝鮮の拉致被害者に関して「滅多にない経験ができて羨ましい」と言った件に関して、世情は「不謹慎な」と激怒したのに対して、世間がどうして栗本薫に腹を立てるのか分からん、という態度を示した福岡人を何人か知っている。ことほどさように、福岡人の「ハレ」を好む気質は、世間の常識と乖離しているのである。まあ、それがいい面に働く面もありはするんだけどねえ。
 私はと言えば博多人には珍しいくらい繊細な神経の持ち主であるので、すっかり不眠症に陥っている。いや、ホントに人からデリケートって言われること多いんだわ。他県人から見ればそうは見えないだろうが、判断基準が全然違うんで。


 物寂しくなって、ふと、東京のグータロウ君に電話をかける。
 一応、6月に上京する予定の日を伝える用件もあったのだが、内実は「電話の向こうの親父の背中が小さく感じられた」からだ。地震のデマの話を伝えると、グータロウ君も笑っていた。
 「暢気だねえ」
 「博多人は遊んでるよ。地震の不安なんて全然ない」
 理解しようったって、理解のしようもなかろうが、世の中には不思議なことは確かにあるのだ。関口君。
話題はついでに『名探偵コナン 水平線上の陰謀』や、『クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ 3分ポッキリ大進撃』に移って、二人で憤懣をぶつけ合う。まあ、『コナン』の出来は毎年のことだから初めから期待しちゃいなかったのだが、『クレしん』はそのレベルダウンの程度が激しすぎたので、少しばかり口吻がきつくなる。
 「アイデアはいいのだが、それがドラマに昇華されてない」
 「台詞が取ってつけたようで説得力がない」
 「どうしてあそこで××××って展開にならないんだよ!」

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04月26日(火)
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