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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■若さゆえの過ち/『ななこSOS』2巻(吾妻ひでお)
 『コミック新現実vol.3』掲載の『うつうつひでお日記』をお読みの方はご承知だろうが、吾妻さんの病気は現在進行形で、今も抗鬱剤を服用している。『失踪日記』だけを読んでいたら、「ああ、もうアル中も治って、マンガを描けるようになったのだろうなあ」と勘違いしそうだが、そうではないのだ。構成、下書きは確かに吾妻さんだが、仕上げは奥さんがされている状態。いつ再び、いや三度、「失踪」してしまうか分からない。せっかくヒットしているのだから、ぜひ平穏に暮らしてほしい。『失踪日記』の内容についていろいろ言いたい人もいるだろうが、ともかくファンとしては暖かく見守っていただけたらというのが願いなのである(最初の失踪もファンの「最近の吾妻マンガはつまらない」などの中傷が原因の一つだった)。いや、公的に発表されたマンガである以上、感想は何を言ったって構わないのだけれど、吾妻さんの目に触れ耳に届く形ではやってほしくないということなのだ。
 吾妻さんの公式ホームページ(http://azumahideo.nobody.jp/)では、日記代わりのスケジュール報告で、吾妻さんが「今更遅いけど、仕事は来ないし、限界だし、自分を苦しめるだけなのでもうナンセンス漫画はやめる。これからは暗い漫画を描くつもり。どこも使ってくれないかも知れんけど」と言ったことに対して、いしかわじゅんが「暗い漫画でも、日記漫画でも、何でも俺たち吾妻ファンは読むよ。好きな物を描いてくれ」と激励し、感動したことが書かれている。吾妻ファンはみんな等しく、同じことを思っているのだ(『ななこ』の描き下ろしマンガで、Dr.石川が昔よりも「優しく」なってるのはこのせいかな?)。
 『ななこ』の解説では、竹本泉が、「少年まんが家の93%は吾妻ひでおの影響を受けてるんだぞ」と力説し、「この『ななこSOS』には吾妻さんの基本要素が全てつまっています。美少女とSFとちょっと不条理と。吾妻ひでお初心者の人にもぴったりです」と薦めている。吾妻マンガを読んだことがないという若い人、けれどあなたの好きな最近のマンガ、そのルーツを辿れは必ず吾妻マンガに行き着くのだ。
 『ななこ』や『オリンポスのポロン』、『アズマニア』はハヤカワ文庫で入手可能だ。売れてないらしいので絶版が近いかもしれないが、『やけくそ天使』も秋田文庫でまだ買える。これも残部僅少だとは思うが、マガジンハウスからは『幕の内デスマッチ!!』『メチル・メタフィジーク』『贋作ひでお八犬伝』『格闘ファミリー』『銀河放浪』が出ている。あなたがマンガを本当に愛しているなら、ぜひ一読を乞う。

04月09日(土)
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