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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■金ならないっ!/『ルパン三世officialマガジン』VOL.3
 視聴率低迷で監督交代、打ち切りに至った旧ルパンにまつわるエピソードの数々は、ファンの間では有名なものも多いけれど、前号から始まった当時の文芸(シリーズ構成)担当の飯岡順一氏のインタビューには、これまで語られていなかったこともかなり含まれていてマニアなら必読である。監督変更後、「Aプロダクション演出グループ」の名称で高畑勲と宮崎駿が演出にあたったことはもはや周知の事実だが(これが宮崎駿の初監督作品である)、飯岡さんの話によれば、実際の演出の打ち合わせは殆ど高畑さんとの間で行われていたそうで、「宮崎さんは脚本の打ち合わせには参加したことがありません」ということである。名作とされるエピソード『にせ札つくりを狙え!』『7番目の橋が落ちるとき』『ジャジャ馬娘を助け出せ!』などは『カリオストロの城』の原型になったと言われているが、実は基本アイデアはあくまで脚本家であるさわき・とおる、宮田雪、松岡清治諸氏の手になるもので、宮崎さんは演出上のアイデアを付け加えたに過ぎなかったということになる。もちろんこのことで『カリオストロ』の名作としての評価が低くなるわけではないが、『カリオストロ』製作当時、宮崎さんがしきりに「アニメは数多くの人の手になるものだから監督だけがクローズアップされるのは不本意だ」と発言していたことの意味はこのあたリにも理由があったのではなかろうかとも思える。『カリオストロ』の基本アイデアに宮崎さん独自のものは意外に少ないのだ。
 飯岡さんが高く評価していたアイデアマンが小山峻一郎という人で、旧ルパンの立ち上げから飯岡さんの片腕となり、脚本も何本か担当していたのだが、路線変更のために全てお蔵入りになってしまった。せめて少しでもということで一本だけ担当したのがルパンの宿敵、ガリマール警部(脚本段階ではガニマール)三代目との対決を描いた『どっちが勝つか三代目!』。あのラストの「ニセモノ大集合」のナンセンスシーンは、高畑・宮崎路線のコミカルなルパンに対して「暴力と狂気、ナンセンスとセックスの毒が全くなくなった」と反発していたという小山さんのせめてものレジスタンスだったのかもしれない。「もうホンモノのルパンはいなくなってしまった」という意味で。

02月07日(月)
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