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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■中尊寺ゆつこさん、死去/DVD『きまぐれロボット The Capricious Robot』
 女性の手による「風俗」マンガの描き手は中尊寺さん以降、やたら増えたし、一概に「風俗マンガ家」という括りでは語れないくらいにバラエティに富むようになっている。倉田真由美やさかもと未明は作品内容からは中尊寺さんの系列にないように見えるが、実際は中尊寺さんが敷いたレールの流れにある。つまり、「美人マンガ家」が自ら顔出しして傍若無人な「オヤジ的」活動をし、それを作品とリンクさせて売っていくという路線である。倉田さんが初期はまさに「そういうマンガ」を描いていたことを想起すれば、このことは容易にご首肯いただけよう。さらに視野を広げれば、西原理恵子や太田垣晴子、小栗左多里だってこの系列に並べることができなくもない。これらの女性作家のみなさん、「オシトヤカ」な旧弊な女性のイメージと比較すると充分オヤジなのである(誉めてます)。
 そんな時代の流れの中で、中尊寺さんの個性は次第に埋もれていき、忘れられていった。近年は政治経済や海外情報のマンガにまで幅を広げていたということだが、つまりは風俗マンガ家としては食っていけなくなっていたということだ。そのことを一番実感していたのは中尊寺さん自身であったろう。
 地道な活動でそこそこ人気を保っていくことはできたと思うが、たとえ努力を積み重ねても、かつてほどの大ヒットを飛ばすことはまず無理だったと思う。だから「若過ぎる死」とか「これからだったのに」なんて押し着せの言葉で故人を追悼することは、“それだけで中尊氏さんの活動を総括し、忘れ去らせてしまう”ことになり、かえって無礼ではないかと思う。中尊寺さんが単に流行語を生んだだけの人ではなかったことをきちんと検証して書き残してくれるマンガ評論家はいないものだろうか。それを切に願う。

01月31日(月)
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