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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ワガママも見て見ぬふり/フィリップ・ジャンティ・カンパニー『バニッシング・ポイント』。
 テレビも設置してあって、そこでは昨日の『ニュース23』に出演していたフィリップ・ジャンティその人が筑紫哲也のインタビューに答えていた。「日本の文楽に影響を受けた」ことも告白。特に、筑紫哲也の「タイトルの『消失点』とは、公演を続けてきて限界に来たということでしょうか?」という質問に対して、ジャンティ氏が「人に必ずある自殺願望を想像していたのかもしれませんね」と答えていたのが印象的だった。

 この世界でも最先端、最高峰にあると思われる舞台をナマで、しかも日本で見られることの至福は、とても生半可な言葉では表現できないが、今回の芝居も変幻自在、レインコートの男女たちが、海底人が、鳥が、鳥籠の中の老人の生首が、人形の貴婦人たちが、小人が、巨人が、現れては消え、ただひとつの消失点に向けて疾走して行く。
 不条理なシチュエーションとナンセンスなギャグが交錯し、役者たちはマイムともダンスともつかぬパフォーマンスを繰り広げる。難解なようだが、それでも「演技のうねり」は観客を忘我の地平へと案内していく。紛れもなく、これまで見た全演劇のトップクラスに位置する舞台だった。

 余韻に浸りながら帰途につく。電車もバスも最終で、帰り着いたのは12時過ぎ。芝居のチケット代より、交通費の方がかかってしまったが、これだけのものが見られるのならば、そのくらいのおカネを使っても全然損した気分にはならないのだった。

11月20日(土)
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