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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■やっぱり「じゃないですか」はいやじゃないですか。
 つまりこれらの誤用は、実際の場面で誤って使われていても、その誤りに気がつかないことも多いと考えられる。「あの人、憮然としているね」と言った場合、ともかく「押し黙っている」点では同じだから、「ぼんやりしている」とも「怒っている」の両方に取れる場合がありえる、ということだ。だから、選択肢を「押し黙っていること」と「おしゃべりなこと」とでもすれば、これは正答率が一気に上がるに違いない。つまり「腹を立てている」を誤答とするのは、「細かいニュアンスの違い」までを問題にした場合に限る、ということになるのだ。
 それに対して、「雨模様」と「さわり」の誤用は、正答率との差が近いこともあって、誤用されては困るたぐいのものである。本来の使用法の中に、誤用の可能性もあまり認められない。だから、意味を正しく認識している者とそうでない者との間で、「雨模様だし、早く帰ろうよ」「え? まだ降ってないよ?」とか、「サワリだけ話してよ」「だから最初から話してるじゃない!」と、トンチンカンな会話になる可能性もある。「小春日和」を「春」のことと勘違いするのと同様、「雨」という単語が入っているために、もう雨が降っているものと勘違いし、「触る」という言葉は次にさらに何か具体的な行動に出ることを予想させるから(「つかむ」とか「もむ」とか(^o^))、「最初だけ」というように勘違いしてしまうものであろう。これらの誤用は、実際に正しく使われている状況を経験していれば、間違える危険は少ないはずなのだ。……死語になりかけてるのかなあ、「雨模様」も「さわり」も。
 じゃあ、誤用をなくすにゃどうしたらいいかと言うと、これ、「間違った言葉遣いをしてる人間を馬鹿にする」しかないんだよね。まあ、角が立たないように優しく注意する、という方法を認めないわけじゃないんだけど、それこそ経験者には分かるだろうが、言葉を間違えて「恥をかいた」経験がないと、人は学習しないものなのだ。優しく言っても忘れるだけだし。私も、高校のころ、“danger”を「ダンガー」と読んで大恥かいた記憶は、今でも忘れられないのである(もちろん、『帰ってきたウルトラマン』に出てきた怪獣「ダンガー」と取り違えたのである)。
 2ちゃんねるで「ガイシュツですが」が流行したのはもう何年も前だが、恐らく最初に「既出」を「ガイシュツ」と読み間違えて馬鹿にされた人は、2度と言い間違え、書き間違えすることはあるまい。ちなみにしげは今でも「示唆」を「ししゅん」と読み間違えています。私が優しく言っても全然訂正できないので、みんなでしげを馬鹿にしてやってください。

 調査では、「新しい表現」として、「若者言葉」の浸透度も同時に調べているのであるが、こちらはより厄介である。なにしろこれは既に「間違い」とは言えなくなっているのだから。
 「何気なく」の意味で「なにげに」を使う人が24%、「すごく速い」と言わずに「すごい速い」と使う人が46 %。「一歳年上」を表す「一コ上」は51 %、「チョー」(とても)は21%、「むかつく」は48 %となっている。こんなのも私にはムリをしないと全く使えないのだが、若い人はおろか、大人にも既に違和感はなくなってきつつあるのだろう。全て前回調査より使用率がアップしている。
 佐藤雅彦の『毎月新聞』の中で徹底的に批判されていた「じゃないですか」の浸透率も高い。相手に確認を求める必然性もないのに、「歯をみがくじゃないですか。その前に……」のような使い方をされても、「なんで『歯をみがく前に』と短く言えんのだ」と腹立たしいだけなのだが、これも前回調査の13%から19%に増えている。「じゃないですか」という表現が間違いなのではなく、どうして使う必要がない時にまでいちいち「じゃないですか」と言わなきゃならないのか? これもやはり、現代人の不安神経症の表れと言えるかもしれない。人間関係が希薄になっているから、些細なことでも確認を取らないと落ちつかなくなってしまっているのである。しかし、言われた方は、「アンタ、そんなに私との間にカベ感じてたの」と、逆に相手との距離をむりやり認識させられるわけだから、不愉快な気分にさせられて仕方がない。

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07月29日(木)
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