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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■『キャンディ・キャンディ』が“今のところ”リメイクされない理由
「金に釣られた」いがらし氏へのしっぺ返しはさらに波紋を呼んでいる。一昨日21日には、東京高裁で、この一連の事件のせいでキャラクター商品を販売できなくなったとして、埼玉県の玩具メーカーがいがらしゆみこ氏と著作権管理会社への損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。原告の主張はほぼ認められて、高裁は、約170万円の支払いをいがらし氏たちに命じた。
判決理由として述べられたのは、「被告のいがらし氏には、原作者と被告との間に、別の訴訟が係争中だったことをメーカーに知らせる信義則上の義務があった」ということである。「義務」とは言っても「信義」の問題である。要するに「原作者に一言、『今度こんなグッズが出るのに許可出したいんだけど、どう?』と言っとけばよかった」ということである。たったそれだけのことを怠ったために、『キャンディ』の再放送は途絶えてしまったし、リメイクの話も宙に浮いてしまった。結局、いがらし氏は、自分の手で自分の作品をアニメ化することすら困難にしてしまったのである。
もちろん、一番被害に会ったのは、「ファン」である。『キャンディ』は、少女を主人公にしたマンガとしては、それまでにないロマンに満ちたドラマとして、数々の少女小説の傑作、『赤毛のアン』や『ハイジ』、『あしながおじさん』ほかの名作に比肩、あるいは凌駕する内容を持っていたと思う。それを、作画担当の人間のこすっからい「欲」のせいで、我々の手から『キャンディ』は奪い去られてしまったのである。その罪の重さを、いがらし氏はどれだけ感じているのだろうか。
ほとんどの裁判が結審、あるいは和解し終わっている現在、再出版、再放送、リメイクの道は開かれているはずであるが、一度「ケチ」の付いた企画に乗ってくる出版社、アニメプロダクション、スポンサーは少ないかもしれない。実際、『おジャ魔女どれみ』シリーズの終了のあと、どうして東映アニメが『明日のナージャ』という、見るからに“キャンディもどき”な作品を世に送ったのか、ということを考えると、『キャンディ』リメイクは現実味の乏しい話かとも思えてくるのである。
……まさかなあ、差別問題にも引っかかってない作品が出版、放送すらされない事態になるとはなあ、ちょっと信じられない話だけれども、実際そういう事態になってしまっているのだよなあ。『キャンディ』を未読の若い人、もし読みたかったら、古本屋巡りをしてごらんなさい。まだ多分、入手できないこともないと思うから。
読んだ本。
マンガ、筒井康隆『筒井康隆漫画全集』。
吉崎観音『ケロロ軍曹』6〜8巻。
田中保左奈『暗号名(コードネーム)はBF(ベイビーフェイス)』2巻。
07月23日(金)
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