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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■追加日記3/『少年名探偵 虹北恭助の冒険 高校編』(はやみねかおる・やまさきもへじ)
 だいたい識者も何か事件が起こるたびに「前代未聞」「理解不能」「空想と現実の区別がつかない」と常套句を繰り返すが、これだけ事件が頻発していて、未だに犯罪者の心理についてそんな浅いことしか言えないのなら、オウムなみにただのバカとなじられても仕方なかろう。想像力が欠如してる人間に評論家とか心理学者なんかやらせとくなよ。
 このドキュメンタリーは、オウムに密着取材していながら、その周辺の「普通の人々」の内包する狂気をも反作用的に描出することに成功している。それはつまり「私たち」もまた「狂っている」という「事実」の指摘だ。狂気から脱却してコミュニケーションを行うためにはまずその事実を認めたところから始めるしかないんだけれど、世の中みんな「狂気」の中に閉じこもっていたい人ばかりだからねえ。これからも何か事件が起きるたびに、人は「信じられない」とか「あんな残虐なヤツと自分は違う」とか、「自分だけ」の妄想の中に「みんなで」入りこんで安心するのだろう。そうして「共同幻想」はあたかも事実である歌のように培われ、流布していく。でもそれって「幼稚な犯罪」を擁護し、育てていることと同じなんだけどね。


 マンガ、はやみねかおる原作・やまさきもへじ漫画『少年名探偵 虹北恭助の冒険 高校編』(講談社/マガジンZKC DX・500円)。
 はやみねさんの『虹北商店街』シリーズのマンガ化だけれど、既に発表されている原作をそのままマンガにしたのではなく、ちゃんと小説版の続きになっていて、しかも今のところこれがシリーズの「完結編」的な趣きになっている(今後も新作長編が発表される予定だが、それはこの『高校編』よりも時間的には前に起こった出来事という設定)。
 小説は読むけどマンガは読まない、という人も(世の中にはそういう奇特な方もいるのである)、これだけは読まねばなるまい(もっともこのマンガもノベライゼーションされてるそうだが)。
 作画を担当したのは、当然、講談社ノベルス版のイラストも描いてるやまさきさん。挿絵の方ではさほど気にならなかったけれど、この人の絵、時々ことぶきつかさなみに歪むねえ(^_^;)。でもそのせいもあるのか、キャラクターがみんな小説版の三倍増しで色っぽくなってるね。小説版のときは小学生・中学生だからマンガ版より色っぽくても困ろうが。
 『虹北ミステリー商店街』『幽霊ストーカー』『江戸川乱歩賞と暗号』『人消し城伝説』『Good Night, And Have A Nice Dream』の6話を収録。
 どれもミステリとしてよりも、恭助の飄々としたキャラクターで読ませるエピソードが多い。彼は天才過ぎて(^o^)、ポアロや金田一耕助みたいにしょっちゅう推理を間違って読者を右往左往させてはくれないのである。だもんで、あまり「動き」がない。そこでヒロインの野村響子ちゃんがやたら事件に巻きこまれるというカワイソウな目に遭うのだけれど、今巻ではそれに加えて、自称・恭助のライバル(サーペントのナーガかい)沢田京太郎が程よく事件を香ばしくしてくれている。大金持ちで尊大、自意識過剰ってキャラはちょっとベタ過ぎって気はするけれども。
 フランス人、ミリリットル真衛門と妹の美恵留、どうやら次に上梓される「フランス編」で先に登場しているらしいけれど、真衛門はまんま『一休さん』の蜷川新右衛門的キャラクターである。ロリコンには激萌えであろう(^o^)美絵留も、響子と恋の鞘当てを演じるのは定番で、意外性がない。けれど、定番だからこそ、もっとじっくりといくつものエピソードを重ねて、ドラマに深みを持たせてほしかったと思う。たった1巻ではやっぱり物足りないのである。
 毎回、恭助と響子の淡い恋心がすれ違うようなってな展開はちょっと気恥ずかしいし、トリックはミステリとしても初歩的で、読み応えはあまりないけれど、動機不在、無意味な暗号、無理な殺人事件が毎回起こるような某ミステリマンガに比べりゃはるかにマシである。小学生に読ませるならこっちのほうがずっといいと思うが、はやみねさん、週刊誌連載用の原作までは書いてくれないだろうなあ。


 マンガ、二ノ宮知子『のだめカンタービレ』6巻(講談社/講談社コミックスキス・410円)。

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10月04日(土)
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