ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491684hit]

■回想の妻/『にっちもさっちも 人生は五十一から』(小林信彦)
 小林さんが『千と千尋の神隠し』を高く評価している点は嬉しいことだ。私自身はどちらかと言うと『千と千尋』は宮崎駿作品としてはつまらない部類に入ると思うけれども、小林さんが誉めるのは“わかる”のである。
 「アニメという特殊性に閉じこもるのではなく、むしろ、“映画として開かれている”」という指摘が評価の根拠になっているからだ。宮崎さんが森卓也さんに語ったという「『荒野の決闘』で、ワイアット・アープがクレメンタインと腕を組んで協会に近づいてゆく時、地上を雲の影が流れる。それをアニメはまだ描けない」という言葉、多分この本で紹介されるのが初めてだと思うが、アニメファンには必読ではなかろうか。これを単に「宮崎アニメは実写志向」、と誤解してはならない。
 「必要な描写を描くための技術を作り出すこと」、という「演出論」として語っていると捉えなければならない。
 「後半の水の上を走る電車、車内での少女の孤独感の描写が、そこまでの狂騒的な気分から観客を浄化してゆく」というのも嬉しい指摘。「あそこのところはよかったね」とずっと以前によしひと嬢と話したことがあったが、まさしくあのシーンこそが「映画」としての白眉なのである。「『エヴァ』じゃん」という突っ込みはできるけどね。

 鮎川哲也さんのエピソードはちょっと悲しい。
 人間不信ゆえに、鮎川さんが小林さんとちょっと疎遠になりかけた話だ。これもミステリファンは必読のエピソード。
 ほかのはもう、実際に読んでみてくださいな。

09月19日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る