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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■西手新九郎は「心の遊び」に留めておこうね/『アレクサンドロス 〜世界帝国への夢〜』(安彦良和)
 「あの人は決して神ではなかった。人間だ! たとえ半分といえども神なんかではなかった! 欠点の多い、大酒呑みの、自惚れやで傷つきやすい、愛情が豊かで酷薄な、誇り高い、そして誰よりも勇敢な、マケドニア生まれのよい青年だった!」
 このセリフもまた安彦さんの創作だろう。しかし、これが虚構であるか真実であるかはどうでもいいのだ。安彦さんがどういうアレクサンドロスを語りたいのか、そしてそれを我々読者がどう受け取るのか。歴史ものを読むポイントは、実はそこにしかない。

 伝えられるアレクサンドロスの臨終の言葉は、側近の「後継者は?」の問に答えた「クラティロス(最も強き者を)」である。この言葉が原因となり、ほぼ半世紀に渡る「ディアドコイ(後継者)戦争」が起こることになる。
 安彦さんの描くアレクサンドロスは、「夢が全てだった」と呟いて死ぬ。
 前者が真実で、後者がウソなのではない。どちらも「物語」なのだ。どちらの物語の方を我々がより面白いと感じるのか、「こんなのアレクサンドロスじゃない!」と憤る読者もいるだろうが、「物語」は常に虚実皮膜の境にあるという近松門左衛門の言葉を噛みしめてもらいたいと思う。

 そういやこのマンガ、あの「ゴルディアスの結び目」のエピソードも描いてないな(^o^)。

09月15日(月)
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