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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■壊れる妻/『ゆうきまさみのはてしない物語 〜天の巻』(ゆうきまさみ)/『ロケットマン』5巻(加藤元浩)
前巻から「水無葉の事件簿」って感じになって、『Q.E.D.』との差別化がちょっと付きにくくなってるキライはあるけれど、誠実な創作姿勢は変わりがない。ただ、世界を舞台にするために「T.E.(トゥルー・アイズ)」という国際情報組織を設定したのは便利ではあるけれど、葉みたいな情に流されやすい子供をエージェントにするのかなあ、という疑問はどうしても付いて回る。もう少し「葉を使うメリット」をアイエネスが示してくれたらなあ、と思うんだが、それともそれがこの物語の根幹になってるのかな。もっとも、そういう細かいところにも注文をつけたくなるのは、それだけ加藤さんの描くもののレベルが高いからなんだけれど。
でも、最初のエピソード「影がゆく/虎よ、虎よ!」はちょっと出来が悪い(^_^;)。「災いを招く本」の保管を以来される葉だったが、初め謎のような絵が描いてあったはずの本が、いつの間にか白紙の本にすりかえられていた。一度も手放ししてなかったはずの本がなぜ?
これって、謎というほどのものじゃあないんだよね。ミステリ読み慣れてる人なら、すぐにトリックもその背景も気がつくし。この程度の謎なら、もっと単純な始末の仕方があるように思わせちゃうのがやや失敗。
2本目は「金属モンスター/天の向こう側」。こちらのほうが読み応えがある。「T.E.」の創設時からのメンバー、ビント・ベルガー。元ソ連のロケット開発者の一人である彼は、ミサイルの誘導制御装置を入手して、「どこか」を破壊する計画を練っているらしい。調査を依頼された葉は、彼が、現在生死不明の葉の恩人、「R」の友人であることを知る。
フォン・ブラウンも回想シーンに登場して語られるV2ロケットの開発の歴史と悲劇。それがビントの「動機」に重い説得力を与えている。「守りの女神」という謎の言葉があっさり解かれちゃうという物足りなさはあるけれど、やはり推理モノは人間ドラマとして描かれてることが命だ。
新本格作家の作品をどうにも好きになれにいのは、やっぱり「推理モノが人間描けてなくて何が悪い」って開き直ってるからなんだよなあ。そりゃ、推理もの以前に小説じゃないでしょ。
今巻でどうやら「R」の消息も知れてきた。次巻は更に盛りあがってきそうな印象である。推理ファンなら、今、加藤さんの作品を見逃すと損だよ。
06月19日(木)
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