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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■事故の顛末(^o^)A/『偽史冒険世界』(長山靖生)/『ハプニングみたい』(いとうせいこう・岡崎京子)ほか
「ジンギスカンは果たして源義経であったか?」。この異説を最初に私が知ったのは、高木彬光の『成吉母汗の秘密』を中学生の時に読んだときだったが、まあ全面的に信用しないにしても(何たって、その証拠と言うのが、あの「天城山心中」が義経と静御前の生まれ変わりによるものってんだから、信じようもなかった)、「そうだったら面白いな」とは思った。
微かではあるが、その「面白い」と感じた事実は、ノンポリなつもりな私にも「日本ナショナリズム」の芽があることを示唆している。誰しも自国が「強い国」「誇れる国」であろうと望む気持ちはあるのだ。
「侵略」「非侵略」の双方とも、「日本が誇れる国であってほしい」という願望が意識の根底にある点では共通しているので、結局、あの論争はどっちも自分の解釈に基づいたナショナリズムのぶつけ合いでしかない。
ただ、明治期・大正期に「偽史」が続々と作られていったのには、より切実な「事情」があった。長山氏は、それが大陸進出・南進政策を正当化するための根拠としてあった、と指摘し、その根拠を一つ一つを確認していく。これが実に明快で、心理的にすんなりと納得させられるのだ。
もちろん、「それはどうかな?」と首を傾げる部分が全くないわけではない。「明治以降の日本は、欧米列強を模倣する過程で、その侵略主義をも真似ながら、しかし明確な「差別の根拠」を持っていなかった」とするのはどうか。庶民はいざ知らず、「日出ずる国日本」としての他国に対する優越意識は、明らかに貴族・武士たちにはあったはずだが。だから蒙古・中国・朝鮮の侵略を受けた博多には、アチラを「野蛮人」と見なす意識がずっとあったんだってば。まあ、白人の黄色人種に対する差別意識に比べれば薄かったろうとは思うけどね。
そういう小さなキズはあるが、当時の日本人たちが「侵略」という意識ではなく、「回帰」という意識で大陸や南を目指していったことは実証できていると思う。
右がかってても左でも、歴史書を読む前に、まずこの「偽史」の歴史を辿ってみることをオススメする。
マンガ、藤島康介『ああっ女神さまっ』25巻(講談社/アフタヌーンKC・460円)。
続けて読んじゃいるんだが、いったい何の話をやってるんだか。
いや別に話が分らないっていう意味じゃないのよ。魔族ヒルドとマーラーが、“天使喰い”を操って、ベルダンディー達、女神のパートナーである“天使”を食らって行く。第5の女神・「戦闘部」のリンドは“天使喰い”の所在を懸命に探すが……。
って「外形」は分るんだが、もともと「心根は清らかだけれど女の子に持てない男の子のところにステキな女神様がやってきちゃったよ〜ん」って他愛ないラブコメだったものが、途中から「愛の絆ってなに?」みたいなモチーフ持ちこんでちょっと感動的な感じになってたのが、何だか天使と悪魔の戦いがどうのって展開になって……でもその「魔族」ヒルドは、「女神」ウルドのかあちゃんで……ストーリー、単に迷走してるだけじゃないのか? 長期連載の悪癖なんだろうけれど、いったいこのエピソードがどこに向かってるのか、何だかピンと来ないんだわ。
藤島さん、最近どんどん絵の描き分けができなくなってきたから、読みにくくもなってるしなあ。本来、私は、ストイックだけれども不器用なリンドみたいなキャラにはハマッて然るべきなんである(私がかわいい女の子なら誰にでも萌えると思ったら大間違いである)。つまり『オトナ帝国』のチャコみたいなタイプね。でもなんか「絵」が違うんだよなあ。いや、ほかのキャラもそうなんだけれど、「表情」がどんどん消えていってさ、ただの「決め絵」になってきてるんだねえ。これ、「いい絵を描こう」と努力する人がかえって「型」にはまっちゃったってことなんだよね。こうなるとどうにも感情移入ができない。この「壁」を乗り越えないと、藤島さん、そろそろ今後が苦しくなってくるんじゃないかと思うけどなあ。
っつーかさ、もう少し面白いもの描いてくれないと、しげがこの手のマンガを一番嫌うんだよ。「面白さが中途半端だ」ってさ。
マンガ、高橋葉介『ドクター・フォービア 恐怖症博士』(秋田書店/少年チャンピオンコミックス・410円)。
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02月17日(月)
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