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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■今日はケンカしなかったね/映画『スコルピオンの恋まじない』/DVD『新八犬伝 辻村ジュサブローの世界』
まあ、基本的には面白かったし、年を取っても決して説教臭い映画を作らないアレンの姿勢には共感を持つが、さすがに1935年生まれ、67歳のアレンに「中年の恋」を演じさせるのにはムリがある。後ろ頭のハゲはちょっとキツイよなあ。なんでもアレンは最初は監督に専念、主演するつもりはなくって、ブリッグス役はトム・ハンクスにオファーしたそうだ。けれど、まあ、あの人も忙しいことだし、それにオスカーを二回も取って、今更コメディを演じたくないという気持ちもあったのかもしれない。あっさり断られたそうだ。
ダン・エイクロイドは、製作記者会見でこの映画に出ることになった理由について「今、この業界でアレンと組みたくない人間がいると思うかい?」と発言しているが、これって、ハンクスに対する皮肉かも知れない。ハンクスは『ドラグネット』でエイクロイドと組んだときはあまり気のない演技をしているから、もしかしたらこの二人、仲が悪いのかも。うまい役者だとは思うけれども、コメディアン時代のトム・ハンクスが好きな私としては、『ロード・トゥ・パーディション』のハンクスを見ていても、片岡鶴太郎がシリアス演技をしているような違和感を感じてしまうのである。いや、ハンクスは鶴太郎みたいにヘタじゃないけどさ。
でも、ムリはあっても、ハンクスの主演である『スコルピオン』より、アレンの『スコルピオン』のほうが絶対に面白いだろう、と思う。お相手のヘレン・ハントはちょっと前ならフェイ・ダナウェイかメリル・ストリープあたりが演じたんじゃないかと思われるようなバリバリで押せ押せタイプのキャリアウーマン大女で、対抗するのがハンクスだと、普通に対等なヤリアイになってしまうのである。チビでメガネでハゲネズミのアレンが頑張るからこそ、画面上の面白さが出る。だから、「これを40代の頃のアレンで見たかったなあ」というのが正直な感想なので、見ている最中、私はできるだけアレンのハゲに心の中でカツラをかぶせて見ていた(^o^)。これからビデオ等でこの映画を御覧になろうとされる方にもそうすることをオススメする。
ワキの役者も、みな好演。
エイクロイドは『アンツ』に引き続いてのアレンとの共演。実はベティは社長のマグルーダーの愛人であるという設定。つまり、アレンとエイクロイドは今回はライバル関係にあるのだけれど、エイクロイドのこういう役柄は、観客から好かれても憎まれてもいけない微妙な演技が要求される。妻と別れてベティと一緒になろうと本気で思ってるけれども、離婚調停がなかなかうまくいかず、実は妻と別れたくないんだとベティに誤解されたら困るなあ、と眉を顰めている、善人と悪人の中間の役どころなのだ。これをエイクロイドは臭くなりすぎずにサラリと演じている。ラストでベティに振られて、「妻との協議を再開してくれ!」と慌てふためくあたりもうまい。
ヘレン・ハントはちょっと大柄過ぎて、私の好みではないのだが、アレンと並ぶと「蚤の夫婦」的イメージが画面に横溢して、それだけで楽しくなる。
ブリッグズにモーションをかけるローラ役のシャーリズ・セロン、なんでブリッグズはベティじゃなくて、こっちを選ばないんだと言いたくなるくらいの美女ぶり。
ブリッグズが催眠から冷めるきっかけを作る親友、ジョージ役のウォーレン・ショーンは、『おかしな二人』でのハーブ・エデルマンかジョン・フィードラーあたりが演じた役回り。ホントにチョイ役なんだけれども、この人がいなきゃ、話が成立しないって役どころなのね。こういう役を設定できるかどうかで、その脚本家の実力が計れる。もちろん、アレンは一流である。
まあ、ストーリーもオチもどこかで見たような、という印象はあるのだが、それは本作が「古きよきアメリカ」の都会派コメディだから。「ホントのニューヨークはこうじゃなかった」という批判は、こういう映画に関しては野暮というものだろう。
思ったよりエイクロイドの出演シーンが多かったので、しげは大満足。映画自体も普通にいい出来だったし。アレンの老けぶりはやはりちょっとキツかったらしく、私が「あのハゲがなあ」と言うと、「ハゲよりアゴのシワが」と、ヒドイことを言う。演技よりもハゲだのシワだのを云々されるんだからアレンもかわいそうである。
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02月15日(土)
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