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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ある「B級」監督の死/『風雲児たち ワイド版』9巻(みなもと太郎)/『復活! 大人まんが』(夏目房之介・呉智英編)ほか
平田さんが東映動画で制作した『グリム童話 金の鳥』(1987)は、何年もお蔵入りになった末、ひっそりと公開されたので見てる人が少なかったが、宮崎駿たちベテランの退社で、興行的にはともかく作品のレベルという点では凋落の一途を辿っていた東映動画が、久々に会心の出来映えの作品を送り出したことで印象に残っている。けれどインタビュー読むと、アレ、ほとんどマッドハウスで作ってたんだね。
必ずしも傑作ばかりを作ってるとは言えなくて、『ボビーに首ったけ』『火の鳥 ヤマト編』『カッパの三平』『お星さまのレール』なんてのはどこか腑抜けたところもあった。
けれど、1作目が思想的にガチガチだった『はだしのゲン』を、『2』では見事に躍動感溢れる少年の青春アクションとして描いて見せたその演出力などは、「平田敏夫」の名前をアニメ史上に残す価値があると充分にかんじさせてくれていた。私ゃ、マッドハウスの演出家の中じゃ、りん・たろうや川尻善昭より、よっぽど平田さんの方を監督として上だと思っている。
なのにだよ、監督として何本もの傑作を作って来てる人がさぁ、『メトロポリス』や『千年女優』では、ただの一スタッフとして参加してるんだよ。ああ、なんてもったいない!
言っちゃなんだが、その二本、平田さんが監督した方がよっぽど出来がよくなったんじゃないかと思う。この意見には賛同者、結構いると思うぞ。小黒さんが平田さんを取り上げたのも、「才能ある人を飼い殺しにするな」ってマッドハウスに対する批判の意味も込めてるんじゃないかな。
『ニュータイプ』の方、新連載で庵野秀明の『エヴァンゲリオン』リニューアルのレポート。
作画のデジタル化だけかと思ったら、なんと音響も5.1チャンネル化、再アフレコまで行ったとか。すごいなあ。
音に拘る、というのは、絵的なモノについ目が行きやすいアニメの場合、しばしば忘れ去られがちなのだが、実は基本中の基本なんである。こりゃ庵野さん、腰を据えてこのリニューアルに取り組んでるな。もっとも、ご本人のエッセイによると、新作が一つポシャったおかげで『エヴァ』に取りかかれるようになったって事情だそうだが(^_^;)。
確かに庵野さんには新作を作ってほしいと思うけれど、これはこれで期待はしてしまう。当時の騒動があまりにデカ過ぎて、「今さらエヴァかよ」って思う人もいるだろうが、もう随分時間が経ったんだし、冷静な目で普通に「面白いアニメだった」てこと認めていいんじゃないかねえ。
ともかく私は、LDの時には間に合わなかったリテイクカットが挿入されて再構成されるんだったら、それだけでもうれしくなっちゃうけどね。
マンガ、みなもと太郎『風雲児たち ワイド版』9巻(リイド社・680円)。
何巻か感想書くのすっ飛ばしてるような気もするが、まあいいや。
時代的には田沼意次の失脚と、松平定信の寛政の改革が始まるあたり。私の子供のころには、まだ田沼意次は「ワイロ政治」の代表みたいな印象が強かったのだけれど、近代経済の先駆者としての評価が高まった背景には、この『風雲児たち』の宣伝効果も大きいんじゃないかな。
これ以前に田沼をよく描いた作品、ということになると、NHKドラマ『天下御免』で平賀源内のブレーンとして登場させていた例くらいしか思いつかない。あのドラマじゃ、仲谷昇が遠山の金さんみたいな役回りで田沼を演じてたように記憶している。
何の本だったか、さくまあきらが「歴史上、無名な人物にばかり光を当てているのがいい」と誉めてたが、えらくトンチンカンな誉め方である。そりゃ、何百人というキャラクターが登場しているから、中には「へえ、こんな人がいたの」って人物もいないわけじゃないが、扱われている人々は、たいてい誰でも名前くらいは聞いたことがある有名人ばかりである。
この巻に出ている主要人物をちょっと挙げただけでも、大黒屋光太夫、最上徳内、前野良沢、杉田玄白、中川淳庵、大槻玄沢、司馬江漢、林子平、高山彦九郎といった面々である。この人たちをみんなひっくるめて「無名人」だの「地味」だなどと言うんだったら、さくまさんの学生時代の日本史の成績は赤点だったに違いない。
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01月14日(火)
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