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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■憑かれた女/『新宿少年探偵団』(太田忠司・こやま基夫)ほか
 本当の菊さんはそんな人ではなかったんだろう(どんな人だったかは知らないが)。今ある映像作品に残された菊さんの姿に我々がどんな妄想を抱こうとも、菊さんはどこかで静かに笑っているだけだと思う。


 マンガ、太田忠司原作・こやま基夫作画『新宿少年探偵団』(秋田書店/少年チャンピオン・コミックス・410円)。
 まあ、これも『金田一少年の事件簿』同様、噴飯ものの設定と言えば言えるんだけれど、あまりそこまでの印象がないのは、明智小五郎四世とか小林芳雄三世とかを出してこなかったおかげだろう。羽柴壮一三世って、誰それってな感じだものな。
 もちろん、ちゃんと江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズをちゃんと読んでいれば、羽柴壮一が誰かなんてことは初歩の初歩。ほかでもない、彼こそが怪人二十面相最初の事件の被害者であり、少年探偵団の創立者であるのだ。小林くんはね、羽柴くんが作った探偵団の団長として後から招かれたんだよ。その彼を「鎌倉の老人」として、新・少年探偵団の後ろ盾に置いたアイデアは悪くはない。少なくとも原作に対して敬意のカケラもない『金田一少年』より遥かにマシだ。
 かつての二十面相の存在とは、関東大震災後、復興し変貌していく街並みのその表面的な静謐さの陰に隠されてはいるが、時おりチラリとその正体を垣間見せることのある、いわゆる「時代の怨念」のようなもの――魔都・東京の二重性の象徴であった。
 現代、少年探偵団シリーズを復活させるとすれば、まさしく、「現代の怨念」、これを描き出さなければなるまい。「髑髏王」という今回の敵キャラクター、美しい人間の骸骨の収集家、なんてところは確かにそれらしくはあるのだが、ここまでドギツイキャラにしてしまうと二十面相より人間豹みたいだ。もっともそれほど陰惨な闇を現代の新宿が潜ませているとすれば、こういうキャラクター化はかえって一つの禊となっているとも言える。
 原作の小説の方は未読なんで、こやまさんによる続編のマンガ化も期待したいところだ(ラストに出て来てるのは大鴉博士か?)。

07月10日(水)
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