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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■戦争は終わった/DVD『名探偵登場』
 四人目のサム・ダイアモンドとその愛人は、またもやハメット原作から『マルタの鷹』のサム・スペード……というより、これはもう、演じるピーター・フォークと、アイリーン・ブレナンは完璧にハンフリー・ボガートと、ローレン・バコールを気取ってますな。もっともこの夫婦の共演はもとネタ映画の『マルタの鷹』ではなくて、レイモンド・チャンドラー原作の『三つ数えろ(大いなる眠り)』の方なんだけど。ボガートが演じるとサム・スペードもフィリップ・マーロウもいっしょくたになっちゃうからなあ。ピーター・フォークは更に『カサブランカ』もちょっくら混ぜてる感じだ。喋り方がいかにもボガートのものマネなんだけれど、地声も似てるんだよね、この人。

 最後の五人目、ミス・ジェシカ・マーブルスはクリスティーのミス・ジェーン・マープル。マーガレット・ラザフォード主演で『パディントン発12時50分』以下四本が製作されているが、これも日本未公開。死ぬまでには見てみたいんだけど、どこかDVD化してくれよ。
 演じるエルザ・ランチェスターは浦沢直樹の『マスター・キートン』で有名になったが(^o^)、元々『フランケンシュタインの花嫁』などでも有名だった。今回のマーブルスのオファーは、やはりクリスティー映画の『情婦』で、判事ウィルフリッド卿(夫のチャールズ・ロートン!)の看護婦役で出演していたことも関連しているだろう。
 マーブルスの看護婦(でも老齢で今は自分が看護されてる)ミス・ウィザース(演・エステル・ウィンウッド)は、森卓也がスチュアート・パーマーのミス・ウィザースがもとネタだとか断定してたが、これは明かな間違い。映画本編でも「5人の名探偵」と明言してるし、名前の一致はただの偶然だろう。いい加減、あのボケ爺さんの知ったかぶりは誰かなんとかしてくれんか。

 探偵以外の人々にもちょっと触れておけば(と言ってもあとは3人だけれど)、主人のライオネル・トウェインはいかにも作家か大富豪っぽい名前だけれど、屋敷の住所が「22番地」。「トゥー・トゥー・トウェイン」で、マザー・グースの歌詞「トゥー・トゥー・トレイン」の駄洒落になっている。
 盲目の執事と唖の女中の組み合わせってのはとても日本ではできないギャグだけれども、屋敷の執事が不具だったりするのは怪奇モノの定番。サー・アレック・ギネスとナンシー・ウォーカーがこれを楽しそうに演じている。
 アレック・ギネスはちょうど『スター・ウォーズ』撮入前だけれども、その脚本を絶賛していることをニール・サイモンに明かしている。重鎮のイメージが強いが、結構サバけていた人のようだ。前にも書いたと思うが、この人のおかま演技が見られるのは多分この映画だけ。オビ・ワン・ケノービのオカマですよ! あ、それで役名がベンスンマムなのか(「名前は?」とマギー・スミスに聞かれて、「ベンスンマム(ベンスンです。奥様)」、と答えるギャグあり。日本語に無理やり置きかえると、「吉田です」「吉田さんね?」「いえ、「吉田出須」です」ってな感じか。……そんな名前の人間はいないぞ)。
 ナンシー・ウォーカーは後に『コロンボ』でもピーター・フォークと共演。あちらではやはりコメディエンヌとしての評価が高いらしい。

 残念ながら、5人の名探偵のうち、ピーター・フォークを除く全てが故人。
 カポーティにギネスも亡くなった。こんな豪華競演は、二度と見られまい。

 本作のパロディぶりは確かに日本人にはわかり難い。
 実際、初見のころ、これをマトモなミステリとして見ようとして、そのオチのデタラメさに頭を抱えたものだった。実際、何度見返しても、オチの意味、憶測はできても納得はできない。
 しかし、これが後の日本の新本格のデタラメさを予告したものだと考えれば(おいおい)、その先見性の素晴らしさに下を巻くことは請け合いである(^o^)。

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07月01日(月)
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