ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491730hit]

■タコを求めて三千里/ドラマ『盤嶽の一生』第3回/アニメ『あずまんが大王』第2話
 黄泉の国から化けて出たか!(←ベタなギャグ)
 うーん、となるとこのシリーズ、結構、昔に撮影されてたのかな。確かに、一週間に一本のペースで撮影したとは思えないハイレベルだ。恐らくは長期間に渡って撮りだめしてたと思しい。なるほど、ドラマの密度が濃くなるはずだ(調べてみたら2年前に撮影終了していたらしい)。
 録画してないので細かい役名については書けないが、タイトルの「津軽の男」に扮するのは宇崎竜童。役の幅は余り広くない人だけれど、田舎から出てきた出稼ぎ浪人(つーかただのムサイおっさん)みたいな役は結構似合ってる。いつもは役所広司の盤嶽だけが騙されるのだけれど、今回は宇崎竜童と二人揃って、津村鷹志扮する豪商に騙される。騙され者同士の友情、というのも面白い。
 ひょんなことから愛刀・日置光平(へきみつひら)を賭けて鶏小屋の番人をすることになった盤嶽。ところが、ほんのちょっと目を離したスキに、98羽の鶏は全て盗まれてしまう。借金のカタに愛刀を手放すことになった盤嶽。ところがそれは全て、商人たちの陰謀だった。
 愛刀を取り返した盤嶽は、事情を知らないまま商人たちの用心棒に雇われた津軽の男と対峙することになるが……。

 善人そうに見えた旅篭屋の主人の笹野高史が、盤嶽たちに渡るはずだった金子の上前をハネて、ちゃっかり最後にオイシイところを攫っていったり、それを見ていた今回のヒロインの渡辺典子が、これも「仕方ないわね」みたいな顔で見逃すあたり、毎回よくもこれだけ「盤嶽以外はみな悪人」パターンを徹底して繰り返してくれるものだ。こうなると、初めからこのシリーズに「盤嶽以外の善人は出て来ない」と判断して見ていったほうがいいんじゃないだろうか。
 盤嶽も、こう毎回騙されっぱなしなら、そろそろ「世間知」ってものを「学習」したってよさそうなものだ。なのに、やっぱり盤嶽は今度もまた騙される。
 「そうそう騙されてばかりはおらん!」という彼のセリフくらい虚しく聞こえるものはない。
 視聴者によっては、余りに騙されやすい彼の実直さを見ていると、かえって腹立たしいようなじれったいような気持ちになる人もいるだろう。「いい加減に気づけよ」と突っ込み入れたくなったり、「結局、騙されるほうが悪いんだよな」と溜息ついてみたり。
 それは確かにそうだろう。けれど、仮に騙されない盤嶽が描かれたとして、その姿が我々の胸を打つことができるだろうか。
 「こいつは俺を騙そうとしているのではないか」、そう疑っても盤嶽はやっぱり相手を信用してしまう。こんなふうに愚直なまでに騙されやすい素直さ、我々はそこにどこか「羨ましいもの」を感じてはいないだろうか。騙されて、盤嶽は怒る。そして吼える。しかし、彼は決して誰も恨もうとはしないのだ。
 だから明るい。盤嶽も、そしてこのドラマ自体も。
 日本映画が描いてきた理想の人物像は、まさに盤嶽をそのルーツとし、「寅さん」に至るものだったと言えるのではないだろうか。
 監督が代わっても、最後のテロップ、「騙されて、騙されて、盤嶽よどこへ行く」、これは変わらない。しかし、その道は多分、空に続いているのだ。


 アニメ『あずまんが大王』第2話「今日も大坂」ほか。
 たまたま深夜2時過ぎまで起きていたので、やっと見ることができた。東京より1日遅れでしかも更に1時間繰り下がり。普通は起きてられねえって。
 映画版は演出のテンポが外れまくってて、笑うに笑えないつまんない出来だったけど、テレビ版はごっつええわあ♪

[5]続きを読む

04月16日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る