ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491716hit]
■さよなら半村良/ドラマ『盤嶽の一生』第1話/『かりそめエマノン』(梶尾真治)
だってさあ、三十数億の記憶を有する少女の苦悩なんて、たかだか数十年の記憶しか持たない人間に想像なんてできるわけないって。
いかに梶尾さんの才能をもってしたって、それを描くことが不可能だってことはわかるじゃんよう。
だから、1作目はそのあたりをぼかすことで小説として成立し得てたわけ。
常人には計り知れない苦悩を抱えた少女がいる、ということで、その「誰にも分らない苦しみ」が読者の共感を得たわけよ。
でも、シリーズを重ねてエマノンを描けば描くほど、彼女の苦悩が卑小化されていくことになっちゃうんだよねえ。
つまり、「エマノン、お前数十億年の記憶持ってるわりにはつまんねーことで悩むなよ」ってな感じ?
「どうしても、ときどき自分の心の重みに押し潰されてしまいそうになるときがあるの。そのときに求めてしまうのが、これ……」……って、タバコかよ(^_^;)。スゴイなあ、三十数億年の苦悩がタバコ一つで和らぐってか。するってえと、人類の一番偉大な発明はタバコか?
この3作目の最大の特徴であり、最大の美点であり、最大の欠点でもあるのは、エマノンに「兄」がいるという設定なんだけど、「なぜ兄がいるのか」って理由もだよ、「え? その程度?」ってなもの。こんな「誰にでも思いつく」理由でいいの? いくらなんでも陳腐過ぎる。SFのセンス・オブ・ワンダーのカケラもないぞ。
……だったら、エマノン、今まで「兄が必要」な状況に出会ったことがないってわけか? 三十数億年も生きてきて?
実は世間知らずなだけじゃね〜のか、エマノン。それはそれでスゴイけどよ、三十数億年間箱入り娘。……SFだなあ(←皮肉)。
ああ、あの1作目の感動はどこへ行ったんだよう。なんであれだけの傑作がこんな愚作にまで落ちるのかなあ。シリーズ化の難しさをつくづく感じちゃうよ。
一気に書かれたせいか、設定上の細かいミスもある。
物語冒頭で「兄」に会おうと決意するエマノンだが、それがラストシーンに繋がるものだとすれば、エマノンの言う「何故、今回得た生にだけ兄がいるというのか」というセリフと時間的な矛盾が生じる。
……言いたくないけど、梶尾さんもついに老境に入っちゃったのかもね。
03月05日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る