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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■さだまさしファンだったことが恥ずかしくて言い出せないやつ多いと思うぞ。……私もだ/『シックス・ボルト』(神野オキナ)
それよりどうかもうあなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」
手紙の中身はどうでもよかった
それよりも償いきれるはずもないあの人から
返事が来たのが ありがたくて ありがたくて
ありがたくて ありがたくて ありがたくて
神様って思わず僕は叫んでいた
彼は許されたと思っていいのですか
来月も郵便局へ通うはずの
やさしい人を許してくれてありがとう
人間って哀しいね だってみんなやさしい
それが傷つけあってかばいあって
何だかもらい泣きの涙が とまらなくて
とまらなくて とまらなくて とまらなくて
あー、この詩を読んで感動した人にはすみません、私はこの詩にゃ全然泣けんのです。
裁判長は、「この歌の、せめて歌詞だけでも読めば、なぜ君らの反省の弁が人の心を打たないか分かるだろう」と諭したとか。
さらにさだまさし本人も、「交通事故で夫を亡くした知人から聞いた実話が元になった歌です。加害者を許した被害者と、被害者からそのような言葉を引きだした加害者の誠実さの両方に心を動かされました。裁判長は二人の少年に、誠実な謝罪こそが人の心を開くんだと言うことを訴えたかったのではないでしょうか」と話したとか。
そうかあぁ?
「加害者が被害者を許した」って、ホントにそうかぁ?
いや、広義に解釈すれば「許す」範疇に入ってると言えはするだろうけれど、この詩の中の被害者の奥さん、はっきりと「あなたの文字を見る度に主人を思い出して辛いのです」って言ってるんだぜ?
前後の「あなたの優しい気持ちはとてもよくわかりました」とか「もうあなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」とか、方便でしょ?
「二度とアンタとは接点持ちたくない」って言ってんだから、これ、完全に「拒絶」じゃん。普通「拒絶」を許されたこととは言わんぜ。
これなら、自分のクビ締めながら泣いてる相手に向かって、「気持ち悪い」って言ってやるやつのほうがよっぽど相手を許してるだろう(^o^)。
この奥さんが優しい人だってのはそうかもねえ。
「『あなたの手紙を受け取ると、こいつカネさえ払ってれば償えると思ってるのか、ああ殺してやりたい復讐してやりたい』って気になるから手紙送らないで」なんて書かないもの。いや、もともとそんな人じゃないんだろうけどさ。
仮にこの「ゆうちゃん」が誠心誠意、償う気で送金してたとしても、それは被害者の生を取り戻すことにはならない、どうやったって償うことなんてできないんだって「限界」を露呈しているのだ。
それをよくもさだまさし、「やさしい人を許してくれてありがとう」なんてあまったるい解釈ができたもんだ。
さらにそれを引用する裁判長も、これで本気で被告が反省すると考えたのかね。ヘタすりゃ、「送金し続けたらいつか加害者の遺族も許してくれる」なんて甘っちょろいこと考えた可能性だってあるぞ。なんたって実刑とは言え、人を一人殺しといてわずか3〜5年で出てこれるんだからよ。
詩なんてさあ、読む人間によってどうとでも解釈できるんだから、こういう「裁判」みたいにキッチリした解釈を下さなきゃいけない時に語ったりしていいものじゃないよ。
そう思いません?
神野オキナ『シックス・ボルト』(メディアワークス/電撃文庫・640円)。
うーん、エヴァンゲリオンチルドレンか? これも。
作者はそう思われたくないかもしれないけどさあ、イラストからして似てるんだからしゃあないって。
2015年(ジェッターマルッスゥー♪)、異星人から一方的な宣告を受け、地球の存亡を賭けて限定戦争が行われることになり、戦士として選ばれたのは17歳の高校生たちだった……。
ってまあ、なんだかモトネタを探るにこと欠かないような設定もそうだけどね、読んでてアタマ抱えたのが、主人公たちのネーミングよ。
真永見由宇(まなみ・ゆう)!
久遠院氷香(くおんいん・ひさか)!
間月 蛍(まづき・けい)!
アイラ・クォレル!
黒原梨津絵(くろはら・りつえ)!
……どこの世界の人間じゃ。
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02月19日(火)
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