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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■平和だねえ。/『蒼い時』『華々しき鼻血』(エドワード・ゴーリー)ほか
君の言うことはすべてつながってるってこと 僕はつい忘れてしまう。
7、パセリのサンドイッチが食べたいな。
僕の知るかぎり 今はその季節じゃないね。
8、人生のすべてが メタファーとして解釈できるわけじゃないぜ。
それはいろんな物が 途中で脱落するからさ。
9、僕がいつも言っているとおりね。
わかってるさ、ただ君がそう言うのを本当に聞いたことは一度もないと思うけど。
10、カンパンヨー−イス ノ リョーキン ワ トクベツ ニ イクラ デス カ?
キブン ガ ワルイ。(←これ、原文も日本語です。でもこれが一番意味不明。どうやら「船酔いしたので甲板で一休みしたい」ってことらしいけど、ニューハンプシャーで船に乗ることあるのかいな)
11、それって沈没よりひどい運命じゃないかな。
でもこれ以外のなんてないぜ。
12、______って作家なんだね。
紹介してあげられるかどうか ちょっとわからないなあ。
13、あっちの方で 僕らには思いもよらないことが起きている。
ひょっとして 何か未知の 恐ろしい状況のせいかも
14、違うふうになると思ってたのに。
なったじゃないか。
15、Foodとは?
ニューハンプシャーにある小さな町。
ううん、正直な話、柴田さんの解説は面白いんだけど、肝心の訳が原文のニュアンスを伝えきれてないな。
2なんか、「生きてることより、生きてくことのほうが大切さ」とした方がずっといいし、そのことへの返事も「覚えとくよ。もっとも覚えとかなきゃならないことはほかにもゴマンとあるけどな」としないと、マジメ腐った意見をからかって揶揄してる様子が伝わらない。
4も、ごく普通の感覚の持ち主なら、「ワインって、すぐぬるくなるよな」「何をどーでもいーこと考えてんだよ」って訳すぞ。冷えたワインの温度が、常温中に放置しといたら高くなることを「あったまる」とは言わん。
最悪なのは6。これは「僕は絶対、君を人前でバカにしたりなんかしないさ」「君が何を言おうがいちいち覚えちゃいないよ」としないと、ホントにワケ判らんじゃないか。原文は“I keep forgetting that everything you say is connected”。直訳すれば、「君の言うことの一つ一つがどうつながっているのか、僕には記憶しきれない」ってとこか。実際、哲学っぽいこと言ってる人って、やたら喋くりまくるけれど、頭が混乱してるだけってことも多いしねえ。
訳者の柴田さん、米文学者の研究者ということだけれど、研究しすぎて肝心の言語感覚がなくなってきてないか。訳を読んでみて意味不明に見えるのは、原文のせいじゃなくて訳の下手さのせいじゃないのかな。
もちろん、原文そのものにしかけられてる韜晦もある。
15では「Food」ってのはニューハンプシャーにある町のことだと言ってるけれど、そんな名前の町はないそうだ。けれどこれも、やたらコムズカシイことを言いたがる相棒に対する「もうあんたには付いてけまへんわ」っていうナゲヤリ発言だと思えば、全然難しくない。
文学者とかいうアカデミズムに毒された人たちが勘違いしてることは、「哲学」ってのがやたら御大層なもんだと思いこんでる点にある。西欧じゃよう、「テツガク」なんてよう、別にお偉いさんの机上の空論じゃなくて、そのへんのオッチャンオバチャンだって日常フツーに感じたり考えたりしてることなんだよ。
フォレスト・ガンプ曰く、「人生はチョコレートの箱みたいなもんだ。何が出て来るか分らない」。誰もが思いつく比喩こそが普遍的なんだよ。
と言うわけで、訳者が一番「むずかしい」という8の訳の「正解」をご紹介。
「人生を何かに例えるのってムズカシイね」
「考えてるうちにワケわかんなくなるからだろ」
だからこの本、「ものごとを難しく考えるなよ」って本なんだよ。訳者にこそ、このコトバの意味をちゃんと考えてほしいもんだね。
今度からゴーリーの本紹介する時には、自分で訳した分を紹介した方がいいかなあ。でもそうすると今度は誤訳がボロボロ出るに決まってるのだ(^_^;)。
もう一冊、ゴーリー本。
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12月03日(月)
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