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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■わが名はロドリゲス/映画『眠狂四郎人肌蜘蛛』『旗本退屈男 江戸城罷り通る』ほか
 守護天使たちは右往左往しながら悟朗を看病するが、やはりケンカしたりしてかえって悟朗の具合を悪くしてしまう。
 そのとき、突然、携帯が妖しく光りだす。「また、守護天使……? いいえ、違うわ! これは……!」
 天使たちの顔が青ざめていく……。
 さすがにこのへんで趣向を変えないと飽きられると思ったんだろうけど、だいたい12人もキャラを出しておいて、その描き分けが、性格的にもデザイン的にもできてないことのほうが問題なのだ。
 監督の越智一裕さん、『うる星やつら』でデビューしてるんだよなあ。やたら女の子キャラが出てくる話は経験済みだろうに、なんでこんないい加減な作りになっちゃってるのかなあ。


 CSチャンネルNECO『眠狂四郎人肌蜘蛛』(1968・大映京都/カラー81分)。
 市川雷蔵の『眠狂四郎』シリーズで、唯一見てなかったのがこの作品。
 シリーズ中最も猟奇性の高い作品として、ウワサには聞いていたので、もう見たくて見たくてたまらなかったのだが、二十年来の夢が一つ、やっと果たせた。
 なんたって、以前WOWOWで狂四郎シリーズが放送された時も、この作品だけは「放送に耐えない」ということでラインナップからはずされてしまっていたんだからね。
 えらいぞチャンネルNECO。
 いや、しかし見てみてなんちゅーかねえ、ハマりましたよ、私は。
 それまでの私の狂四郎シリーズベストワンだった第2作『勝負』を抜きました。
 殺陣自体は、もうこれが雷蔵の死の前年の作ということで、お世辞にも元気があるとは言いがたい。けれど、全編に漂う虚無の匂い、これはもう、シリーズ中郡を抜いていたのだ。

 狂四郎が気まぐれから母の墓参に立ち寄った甲府の村。
 この辺りでは将軍家斉の妾腹で、世間的には「死んだ者」とされていた双子の兄妹、土門家武と紫が暴虐の限りを尽くしていた。
 刑場で村人を矢で射殺して遊ぶ兄、家武(川津祐介)。
 村男を色欲の餌食にした挙げ句に惨殺する妹、紫(緑魔子)。
 二人はまた兄妹でありながら、道ならぬ関係にもあった。

 自分と同じ境遇の黒ミサの子、薬師寺兵吾(寺田農)の身代わりに、彼らの居城、「鬼館」に出向いた狂四郎は、色仕掛けで迫る紫を鼻であしらい、いつものように恥をかかせて退散する。
 怒り狂う紫と、その狂態にかえって狂四郎への愛を感じ取った兄、家武は、ともに狂四郎の命を狙い始める。
 南蛮渡来の秘薬を仕込んだ家武の毒矢が狂四郎の身を襲い、狂四郎は空を見上げ呟く。
 「これが俺の見る最後の空の色か……!」

 「紫」って、やっぱり「紫式部」から取った名前かなあ。
 伝説では色欲道に落ちたって言われてるし。『源氏物語』書いただけでそこまで言われるのは受難としか言いようがないが、眠狂四郎シリーズ中、この紫が屈指のインラン女であることは間違いない(^_^;)。
 いやホント、いとも軽々と久保菜穂子を越えちゃってます。
 「お兄様に狂四郎は殺せませぬ。アレは私のもの……」
 実質、今回の話は狂四郎、家武、紫の三つ巴なのな。強力なライバル剣豪というのが登場しない代わりに、狂四郎を狙う執念の深さ妖しさは見ていて寒気が走るほど。松田優作のテレビ『探偵物語』「聖女が街にやってきた!」では清廉なシスターを演じた緑魔子、胸こそ晒さないものの、まさしく蜘蛛のように狂四郎を絡めとろうとする。
 「そなたは、私に似ているとは思わぬか?」
 「似ているから、むかつく」 
 紫を攫った廃屋の中、女間者が十字架にかけられ殺されているその下で、狂四郎は自分が生まれたきっかけとなった黒ミサを再現するかのように紫を犯す。
 しかし果たして、犯したのは本当に狂四郎の方だったのか。

 邪恋もまた、紛れもなく「恋」である。
 というか、私は世間がなんの考えもなく口にする「純愛」なんてものに実態があるなんて思っちゃいない。恋をいちいち峻別することになんの意味があるというのか。

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10月25日(木)
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