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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■福岡腰痛クラブ/『庵野秀明のフタリシバイ』ほか
いくら『透明ドリちゃん』の柿崎澄子はよかったよねエ、と言ったって、誰が見てたんだそんなん、と言われてしまうのである。
『羊』に私がなぜ期待するか、なぜそんなに加藤夏希に入れこむか。
だって、ここしばらくの特撮ヒロインで、ずっと特撮ものに出演し続けてくれてる女優がどれだけいるかね? とりあえずファンをつける、あるいはトレンディドラマに出演するためのきっかけにする、そんな感じで出演してるやつが多くないか?
どうして水野美紀のフィルモグラフィーから『くノ一忍法帖』『くノ一忍法帖U 聖少女の秘宝』がカットされているのだ。そんなに恥ずかしい役だったのか。はっきり言うが、『ガメラ2』の誰が演じたって変わらんような役柄や、『踊る大捜査線』みたいにどこに出てたかわからんような役より、よっぽど輝いてたぞ。
ファンはいいんだけど、製作スタッフが役者を大事にしないってのが、やっぱり情が薄いと思うんだよなあ。
特撮番組、子供番組に出たせいで、次の仕事が来なくなったって例、いくらでもあるじゃないか。なぜ次の仕事でも使わない。どうして特撮関係者の男優は悪役に、女優はアダルトに行かねばならんのだ(ちょっと嬉しい面はあるけど)。
俳優を使い捨てにする製作状況に対して、ファンとして腹を立てているのだ。 ……断言しよう。加藤夏希は逸材である。
いや、演技的にじゃなくて、特撮ものに偏見がないという点においてだ。
CSのガイドやってる様子見てると、素顔は意外と能天気な姉ちゃんらしいのだが(だからこそ特撮ものにばかり出てるのかもしれないが)、あまり馬鹿にしないでみんなで大事に育てていこうよ。
『庵野秀明のフタリシバイ』。
庵野秀明の、アニメ関係者が殆どいない対談集。というか、殆ど演劇関係者ではないの。
鴻上尚史、野田秀樹、幾原邦彦、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、松尾スズキ、いのうえひでのり、常盤響、田口ランディ、林原めぐみ、Dr.エクアドル。
「もう私、アニメには興味ありませーん」って感じが見て取れるな。
で、当然話はアニメよりも「演劇とはなにか」みたいな話ばかりになっちゃうわけだ。この本、サブカルチャーの本棚に平積みになってたんだけど、演劇棚に置いておいた方がいいんじゃないか。
ある意味、庵野秀明というヒトは、インタビュアーとして類稀なる才能を持った人だと言えるかもしれない。
以前、大島渚と対談した時に、「戦争世代や全共闘世代の人はいいですよね、共通体験というか核があって。私たちにはアニメしかないですから。空っぽなんです」と、恐ろしいことを言ってのけていた。
……あれだね、これ、普通言っちゃいけないことなんだけどね。言ってみれば、乙武広匡に対して「いいよね、五体不満足で語ることがあるから」と言っちゃうようなもんだ。
それをあえて言うってのは、「私は空っぽです」ってことを自分の立場として開き直ってるわけで、この人の「もう作るものがない」「自殺しそうになった」とか、一連の消極的発言はウソとは言いきれないが、それが庵野さんの創作する立場なのだから、こちらがいちいち心配する必要はないのである。
でも演劇関係者ってのはこういう言葉にいちいち反応するのだね。
例えば鴻上尚史との対談。
鴻上さんは『エヴァ』に並々ならぬ興味を持っていて、なんとか庵野さんから創作の秘密を聞き出そうとするのだが、庵野さんの答えは「そうです」「はい」「いえ」ばかり。結局気がつくと鴻上さんが「演劇の秘密」を語っているのである。
「目の前に役者いるのにノートにね、役者の配置とか描いてる奴はろくな奴じゃないです。演劇なら動いてもらった方がすぐわかる」
「僕らが芝居でね、謎を出すのは、世界って結局微笑みはしないし、世界は決して僕らの了解可能なものではなくて、その中で生きていくしかないのだから、了解可能な世界というものが嘘くさいっていうものがあって」
……熱く語るよなあ、演劇モノは。
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07月25日(水)
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