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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■事故&カラオケ地獄変/『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 始動編』T&U(安彦良和)
もともと、安彦良和の線の持つ「揺らぎ」は基本的に閉塞線によって成り立つアニメには向いていない。安彦良和が参画した数々のアニメーションの中で、最も氏の資質が発揮されたアニメはといえば『クムクム』であろうが、それとても、もともとの安彦氏の絵が持っていた独特の温かみは完成作では半減しているのである。
20年前とは、安彦氏の絵も相当に変化している。
アムロも、フラウ・ボウも、等身が伸び、やや面長な印象を受ける。その「絵が変わった」点をもって、本作を貶めることは不当な評価というものだろう。
未だにどこがどう違うのか明確に答えられる人間が少ないのが困りものなのだが、アニメとマンガは違うのだ。
似て、非なるもの。
マンガの止め絵が表現し得ること、静止画の持つ間、コマとコマのあいだの間に、アニメを引退し、マンガ表現に取り組んできたこの10年の蓄積が見事に評価されているのだ。
流れは一見同じに見える。
家族を失ったフラウ・ボウをアムロが叱咤し、「走れフラウ!」と叫ぶシーン。
アムロは涙を流し、倒れたガンダムを、人々を殺戮したザクを見る。
1ページごとに挿入されるアムロのバストショット。アニメでは一瞬で流す、テンポを考えたら流さざるを得ないワンカットも、マンガでは「溜め」となる。
時間が止まり、読者はそこでアムロの心の怒りと悲しみを共有するための充分な時間を得る。
20年以上経って、私は初めてこの「走れフラウ!」というセリフを、まるで自分がアムロに成り代わったかのように感じ、自分の発する声として読むことが出来たのだ。
まさしく「オリジン」の名に相応しい。季刊誌ゆえに次号は秋の発売だが、週刊ペースで絵やドラマが荒らされる心配もない。おそらくは全20巻にはなるであろうこの今世紀最初の「大作」を読める恩恵に浴したことを喜びたい。
まだ物語は始まったばかり。
これから先、安彦さんの描くセイラさんに、ミハルに、マチルダさぁ〜んに、ハモン様にララァに会えるのだ(女ばっかりやんけ。それにミライさんはどうした?)。
ああ、生きててよかった!
06月28日(木)
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