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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■いつのまにかの240000ヒット/舞台『ブラックコメディ』(劇団四季)
もちろん、会話のトラブルを避ける方法がないわけではなくて、言葉には「概念」と「個別の解釈」の両面があることを理解して、「個別な解釈のズレ」に関しては許容するなり「そのズレを認めるか否か」で議論をするなりすればいいのだが、たいていの人は自分の個別の解釈を「絶対的な共通概念」だと勘違いしてしまっているのだ。
だからある言葉について、「差別用語か否か」などという不毛な議論が行われてしまうことになるのだ。
そんなの、「差別用語」だと思う人間にとってはその通りで、そうでない人にとってはそうでないという「個別」の問題に過ぎない。どっちかが正しいということにはならないのである。だからこそ言葉を一方の解釈にのみ基づいて禁忌扱いするということは、それ自体が、言葉を知らない人間の愚かな行為だと断定するよりほかはない。
「誰か一人でも傷つくのであれば、その言葉は使ってはいけない」。こんな屁理屈をまともな理由として受け入れるのなら、我々は言葉を棄てるしかない。人を傷つける可能性のない言葉など、この世には存在しないからだ。
言葉に鈍感な人間は永遠に鈍感なままで、しかも始末に悪いことに自分は言葉には敏感だと信じ切っているものだ。アサヒが今後も同様の不祥事を起こすことは火を見るよりも明らかだろう。
●福岡シティ劇場『ブラックコメディ』(BLACK COMEDY) 午後7:00〜 (1時間20分)
作=ピーター・シェーファー
訳=倉橋 健
●スタッフ
演出 浅利慶太/装置 土屋茂昭/照明 沢田祐二・長谷川智子/衣裳 大石若草子/舞台監督 嶽本由郎/舞台 H松信子・松木克憲/音響 佐々木紀子/舞台装置 大野陽介・冨沢奈美/小道具 杉田 都・深沢幸徳/コスチューム 後藤利江・山本サナエ/ヘアー・メイク 前野香代子/協賛 九州電力・NTTドコモ九州・西日本シティ銀行・積水ハウス/協力 九州旅客鉄道・西日本鉄道・日本航空/後援 福岡県・福岡市・福岡県教育委員会・福岡市教育委員会
●キャスト
ブリンズリー・ミラー(自称彫刻家):石丸幹二/キャロル・メルケット(ブリンズリーのフィアンセ):坂本里咲/ミス・ファーニヴァル(二階の住人):はにべあゆみ/メルケット大佐(キャロルの父):岡本隆生/ハロルド・ゴリンジ(古美術商):栗原英雄/シュパンツィッヒ(電力会社従業員):川口啓史(劇団俳優座)/クレア(ブリンズリーの別れた恋人):八重沢真美/ゲオルク・バンベルガー(大富豪・美術収集家):煖エ征郎(劇団民藝)
●ストーリー
舞台はある日曜の夜。
無名の若手前衛彫刻家ブリンズリー・ミラーのアパート。
ブリンズリーはフィアンセのキャロルと、華やかな骨董品で部屋をにぎやかに飾りつけている。優美な椅子、精巧なランプ、上等な花瓶、値打ち物の仏像などなど……。
実はこれらの作品は、現在旅行中で不在の隣人、古美術商ハロルド・ゴリンジのコレクション。こっそりと無断で持ち出し、さもブリンズリーの調度品のように装って来客をもてなすというキャロルの計画なのだ。
来客のひとりは億万長者の美術蒐集家ゲオルク・バンベルガー。ブリンズリーの作品を見に訪ねてくることになっている。もうひとりはキャロルの父親であるメルケット大佐。娘のフィアンセとしてブリンズリーがふさわしい男なのか値踏みするためにやってくる。
並べられた骨董品が老大富豪のお眼鏡にかない、賞賛される姿をフィアンセの父親に見せることができれば、ブリンズリーにとっては富も名声も愛する女性も手に入れることのできる一世一代の大舞台になるはずなのだが……。
「よりによってこんな日に!!」
突然部屋は真っ暗な停電状態。
そんな中、隣人が予定変更で帰宅。上階に住む婦人や電気会社工事人、ブリンズリーのかつての恋人クレアまで登場し、事態をさらに混乱させていく。
観客からはすべてが見える“明るい暗闇”の中、パニックがパニックを呼び、窮地に陥るブリンズリーの運命。果たしてその結末は……。
「演出 浅利慶太」とあるが、この舞台の最大の演出は、既にピーター・シェーファーの戯曲の中にある。
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02月09日(金)
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