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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■去勢された人々/映画『パプリカ』
その事実を前提としない「家族復活論」がいかに現実性に乏しいか。きれいごとの報道に単純に誘導されない知性を我々は取り戻さねばならないと思う。そうでなければ、我々はいつまで経っても去勢されたまま、未熟な性を持て余し、コントロールできないまま暴発を待つだけの危険な社会の中で生き続けていかねばならなくなるのである。
シネリーブル博多駅で、映画『パプリカ』。
原作 筒井康隆/監督 今 敏/脚本 水上清資、今 敏/キャラクターデザイン 安藤雅司/美術 池 信孝/音楽 平沢 進/制作 マッドハウス/製作 パプリカ製作委員会 (マッドハウス, ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント)/配給 ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
声の出演 林原めぐみ(パプリカ/千葉敦子)、江守 徹(乾精次郎)、堀勝之祐(島寅太郎)、古谷 徹(時田浩作)、大塚明夫(粉川利美)、山寺宏一(小山内守雄)、田中秀幸(あいつ)、こおろぎさとみ(日本人形)、阪口大助(氷室 啓)、岩田光央(津村保志)、愛河里花子(柿本信枝)、太田真一郎(レポーター)、ふくまつ進紗(奇術師)、川瀬晶子(ウェイトレス)、泉久実子(アナウンス)、勝 杏里(研究員)、宮下栄治(所員)、三戸耕三 (ピエロ)、筒井康隆(玖珂)、今 敏(陣内)
ストーリー
パプリカ/千葉敦子は、天才科学者時田の発明した、夢を共有する装置DCミニを使用するサイコセラピスト。
ある日、そのDCミニが研究所から盗まれてしまい、それを悪用して他人の夢に強制介入して悪夢を見せるという事件が発生するようになる。
犯人の正体は、目的は。そしてこの終わり無き悪夢から抜け出す方法は……。
『富豪刑事デラックス』『時をかける少女』『日本以外全部沈没』、そして『パプリカ』と、昨年は「筒井康隆イヤー」と言ってもいいくらいの筒井作品の映像化は大盛況で、これなら筒井さんも生活は安泰であったろうとホッとしている。
なんせ筒井さん、何年か前のエッセイに「生活水準を維持するためには俳優を続けるしかない」旨のことを書いてらっしゃいましたからねー。筒井作品が読まれないなんてことは、格差社会よりも北朝鮮危機よりも憂慮すべき事態だと、本気で思ってる次第なんですよ。
若い連中で、「活字なんてつまんない」とか糞馬鹿なこと言ってるやつは吐いて捨てるほどいるのだ。もう、はっきりと「お前ら人間じゃねえ。どーぶつだ」と言ってやった方がいいんじゃないか。それが言えないのは大人が自信なくして現実逃避してるだけだと思うぞ。
それはさておき、『パプリカ』である。
サイコダイブを題材にしたSF作品は数多いが、妄想ツンデレ(笑)少女が精神治療を行うって設定のものはそう多くはないと思う。『GS美神 極楽大作戦!』にも似たようなエピソードがあったが、『パプリカ』とどっちが先だったろうか。
筒井SFのヒロインと言えば、真っ先に思い浮かぶのが『家族八景』『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』の火田七瀬だが、パプリカのキャラクターは間違いなくその延長線上にある。
テレパス七瀬は男性の意識、無意識を覗き、精神破壊を行うが、これは逆説的な「癒し」であった。七瀬シリーズ書かれた時代は、精神治療が一般化していなかったから、七瀬は強制的に男性の心に入り込まざるを得なかったわけだが、パプリカは違う。
パプリカは既に男性から求められている。男性の好む容姿を持ち、ツンデレ属性まで持ち合わせ、ストレートに患者を夢の中でカウンセリングして抑圧を開放し、癒しを与える。男はパプリカの意のままだ。
しかも物語の中で、最終的に癒されるのは典型的なデブオタ・時田である。
これではちょっとオタクに媚びすぎてるんじゃないかという気もしないでもないが、つまりは世の男性はそれくらい、現実の女に幻想を持てなくなってしまっているということなのだろう。
オタク的コミュニケーション不全は、自意識を過剰に拡大させ、妄想を肥大化させる。その結果、理想の女性像は現実と極端に乖離し、もはや自らの妄想の中でしか性的快楽を得られなくなる。工夫がないくらい単純に、幼児退行を起こし、パプリカになでなでしてもらうことを求めることになるのだ。
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01月06日(土)
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