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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■蠣・蠣・蠣!/DVD『ウエスト・サイド物語』
戦争映画やSF、サスペンスやホラーなど、実際にはあらゆるジャンルの映画を製作してきたロバート・ワイズ監督だが、代表作はと言われると、どうしても『サウンド・オブ・ミュージック』とこの『ウェスト・サイド物語』ということになってしまう(SFファンとしては『地球が静止する日』を挙げたいところだが。『スター・トレック』? 何それ?)。
しかし、『ロミオとジュリエット』を下敷きとしたこの物語、ドラマとしては他愛なく、正直、大人の鑑賞に耐えるほどのものではない。
やはり見所はレナード・バーンスタイン作曲のミュージカル・ナンバーにあるので、映画としての躍動感は、テーマソングと言える『トゥナイト』よりも、群舞の魅力に溢れる『アメリカ』や『クール』の方が勝っている。クローズ・アップが映画の魅力の本質であるとすれば、ナタリー・ウッドとリチャード・ベイマーのカップル二人の見詰め合いよりも群舞の方に軍配が上がっているということは、映画の敗北を意味しているとは言えまいか。
つまり、『ウェスト・サイド』は、舞台で見たほうが面白い、ということになるのだ。
もちろん、これは本場のブロードウェイ・ミュージカルで、という意味であって、間違っても短足胴長な日本人拝優によるエセ・ミュージカルなどではない。
しかし、名作の誉れが高いにも関わらず、この映画に出演した俳優たちは、リタ・モレノを除いて、殆どが不遇の人生を送っている。
ジョージ・チャキリス、ラス・タンブリン、リチャード・ベイマーらは泣かず飛ばずだし(タンブリンが『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン』に、チャキリスが『日本の面影』にと、日本に関わっているのが面白い)、ナタリー・ウッドは恐らく夫であるロバート・ワグナーに殺害されている。
リアルに作ればかなりシリアスで救いようのない物語になるはずのものをミュージカル仕立てにすることにどういう意図があるのか、制作陣は多分、あまり深くは考えていないだろう。映画が描ききれなかった不運と悲惨の物語を、俳優たちはまるで、実人生で再現して見せてくれているようである。
11月22日(水)
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