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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■どんな夢を見た?/『奇談(キダン)』(諸星大二郎・行川渉)
文学は基本的に映像化できるものではない。映像化できないからこそ、文章で表現しているのである。それをあえて映像化しようとするなら、正攻法な映像演出は全く役に立たない。ならばどうするか。それにはウラワザというか、脇から攻めるような「搦め手」を考えるしかない。実相寺監督は、果たしてこのことに気付いているのだろうか。『姑獲鳥の夏』ではまさにその「搦め手」を駆使してみせてくれたから、期待はしたいのだけれど、漱石は一筋縄で行く相手ではない。以前、実相寺監督が泉鏡花の『沼夫人』を映像化した時には(『青い沼の女』)、役者(特に主演の山本陽子)の演技が安っぽくて目も当てられないシロモノになっちゃってたからねえ。期待半分、不安半分ってところだねえ。
それにしても実相寺監督は、ここんとこ、『姑獲鳥』と言い、『乱歩地獄』と言い、映像化が難しい作品にばかりに挑んでいる。失敗する可能性の方が高いというのは分かりきっているのに、この意欲、気概はいったい何なんだろう。単に何も考えていないだけかもしれないが、こういう挑戦は若手の監督さんこそやるべきことじゃないのだろうか(その意味では『バトルロワイヤル2』の深作健太監督や、『CASSHERN』の紀里谷和明監督などは、作品の出来とは別に評価してやらなきゃならない面はちゃんとあると思う)。
もう一つの映画の話題は、諸星大二郎の『妖怪ハンター/生命の木』の映画化である『奇談 キダン』の続報である。
行川渉によるノヴェライズを読んでみると、30ページほどの短編を長編にするために登場人物を増やし、主人公にまつわるサイドエピソードも付け加えたりしているのだが、概ね原作通りの展開になっている。ただ、「おらと一緒にぱらいそさ行くだ」のセリフが「おらと一緒にぱらいそさ行くんだ」になっていたのは誤植だと信じたいが。
公式サイトもいつの間にか出来ていて、阿部寛扮する稗田礼二郎のルックスも紹介されているのだが、さすがに原作通りの長髪は無理ではあったが、全身黒服なのは前作『妖怪ハンター ヒルコ』の時の白服・沢田研二よりも原作のイメージに近くなっている。黒ぶちメガネも悪くないアイテムである。
しかしそれよりも脇のキャストが凄くて、スチールを見る限りでは、「重太」は神戸浩で、「三じゅわんさま」が白木みのるである。ナイスキャストっつーか、本人そのものじゃないかと言うか、こんなにインパクトのあるキャストは空前絶後だろう(笑)。これだけでもこの映画が「異端映画」になることは約束されたようなものである。
あとのキャストは、神父が清水紘治だとは分かるのだが、殆どが何役をやるのか不明。でも公開日も近いし、そのへんは見てのお楽しみということで。土屋嘉男さんや堀内正美さんと、特撮ファンにもお馴染みのキャストを揃えてくれているのが嬉しい。「超星神グランセイザー」のちすんちゃんを第二のヒロインに持ってきてるのも特撮ファン動員を狙ってのことだろう。
肝心の「善次」を誰が演じるのかが公式サイトを見てもよく分からないのだが、これはシークレット・キャストなのか、それともCG映像にでもする気なのか(笑)。まず間違いなく駄作になることだけはないと思われるので、ジャパン・ホラー映画にいい加減飽きてきたお方も、諸星大二郎の世界に浸ることで渇を癒していただけたらどうだろうか。でも「珍品」になる可能性もあるので、見て腹が立っても怒らないでね(笑)。
いつものように父を見舞いに行ったら、会うなり、「根上淳が亡くなったなあ」と「おおごと」のように呟いた。
俳優・根上淳、24日、脳梗塞で死去、享年82。
もう20年以上も糖尿病に苦しみ、最初の脳梗塞を起こしたのも8年前、それから「まだらぼけ」も起こして、夫人のペギー葉山さんもかなりご苦労なされていたとのことである。
ちょうど、父の病状とも重なるので、父が不安になるのは分かる。まだらぼけとまではいかないにしても、父の記憶の混濁はこの数年、かなりひどくなってきているのだ。これももしかしたら動脈硬化かがあちこちで進行しているせいかもしれない。
けれど、父にかけるべき適切な慰めの言葉があるかといえば、そんなものはないのである。
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10月25日(火)
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